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論説 ウィズ・コロナと神社 共通認識に向けた指針を

令和2年07月27日付 2面

 新型コロナウイルス感染者数の増加傾向に歯止めがかからない。七月十六日の国内感染者は緊急事態宣言発出後の四月十一日以来となる六百人超となり、十八日にはさらにそれを上回る感染者が確認されてゐる。
 増加数が顕著な東京都内では、ホストクラブなど「夜の繁華街」関連の感染増加が連日伝へられ、加へて家庭や職場、会食等における感染者も確認されるなど感染拡大が止まらない。「夜の街関連」では、当初十代から三十代までの世代の感染が中心だったが、重症化リスクの高い年齢層における感染増加も見られてをり、都は感染状況の評価を最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げた。
 政府により発出された緊急事態宣言が五月二十五日に解除され、六月十九日からは都道府県をまたぐ移動が全国を対象に緩和されるなか、各地の神社からは少しづつだが参拝者が増えてきたとの報告も聞かれる。しかし一方で、昨今の感染拡大により参拝や祈祷の予約を再度見送る動きも見られると嘆く神社もあり、感染拡大をめぐる状況は多岐に亙ってゐる。

 「海の日」の七月二十三日には、例年なら多くの海水浴場で「海開き」の行事が開かれ、安全祈願の神事も斎行されてきた。しかし今年は感染拡大を恐れ、多くの海岸で海水浴場の閉鎖が決定してゐる。しかしながら駐車場閉鎖などの措置を取っても一定数の遊泳者が訪れると見られ、安全祈願の神事が執りおこなはれず、しかも監視者がゐないなかでの水難事故の発生や熱中症の増加なども懸念される。
 また斯界においては毎年この時期、慰霊行事をはじめ、さまざまな研修会や講習会などが開催されてきたが、今年は感染症拡大を防ぐために軒並み延期の措置が取られてゐる。秋口からは例年であれば各種大会などが開催されてをり、さらには秋祭りや七五三詣、年末年始の準備も考へていかねばならないが、いづれも場当たり的な対応では済まないだらう。さうしたなかで斯界だけでなく社会全般にいへることは、感染拡大に対する認識や対応に温度差が生じてゐることだ。

 プロ野球やサッカーJリーグなどは、政府のイベント制限緩和の指針に従って、七月十日から最大五千人を上限とする観客の受け入れを始めた。八月一日からは人数の上限を撤廃するなど、さらに条件を緩和する方針が示されてゐたが、感染者数が高い水準で推移してゐる現状を踏まへ、専門家の意見を聞きながら慎重に判断することとなるやうだ。
 さうした中、都内の劇場や、保育施設等で集団感染が報告されるなど、感染防止対策徹底の難しさを改めて感じさせる事例も後を絶たない。
 ある神社では、いはゆる「ソーシャルディスタンス」を意識し、間隔を空けて並んでゐた参拝の列に割り込みがあったとのことで参拝者同士の言ひ争ひが収まらず、警察が出動するトラブルも起こったといふ。また、いはゆる「三密」を避け、換気にも心掛けつつ少人数で昇殿祈祷をおこなってゐるものの、咳エチケットを守らない参拝者がをり、注意喚起をどこまでしたらいいのか、といふやうな悩みを抱へる神職もゐる。いづれにしても、手指の消毒やマスク着用の徹底を呼び掛けたり、境内での密集・密接を避けるため参拝者同士の会話を極力控へることを促したりするやうな神社側の取組みが必要不可欠である。

 神社側から参拝者に対して感染拡大予防を訴へる動きが出てきたのは、神社の保全と運営を確保しつつ、安心して参拝できる環境を整へ、祭祀の厳修を徹底するためにも、神社で感染者集団(クラスター)を発生させてはならないといふ意識昂揚の表れに他ならない。そのためには、まづ神社関係者が徹底した感染予防を心がけ、聖職者たる自覚をもって行動を自制すべきであらう。その上で氏子崇敬者・参拝者に感染拡大予防への協力を呼びかけなければ、その言葉に力はない。
 感染拡大が収まらず、ワクチンや特効薬の開発が難航してゐる現状に鑑み、秋から正月に向けての対策強化に乗り出す必要がある。いまこそ「ウィズ・コロナ」と呼ばれる今日の社会における「新しい生活様式」に則した神社独自の指針を検討・蓄積し、広く共通認識を構築すべき時だらう。
令和二年七月二十七日

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