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論説 秋祭りを控へ 情報共有に向けまづは発信を

令和2年08月31日付 2面

 今号発行日の八月三十一日は、いはゆる雑節の一つ「二百十日」にあたる。今年は残暑厳しいなかで迎へることとなりさうだが、立春から二百十日を経て秋の稔りを控へたこの時期は台風の襲来も懸念されることから、古来各地で風鎮祭などの神事が執りおこなはれてきた。
 梅雨明けの遅れによる日照不足、さらにはその後の猛暑により、野菜の生育や花卉の出荷などにも影響が見られてゐるといふ。水稲の生育状況も懸念されるところだが、今後、台風被害などの生じることがないやう祈念しつつ、豊かな稔りに感謝する秋祭りの日を迎へたいものである。

 さうした秋祭りをはじめ七五三詣や初詣など、これから人々が神社に集まる機会の多い時期を迎へる。神社本庁では「祭祀の厳修」を前提に、政府が求める「新しい生活様式」に則った祭典(神事)の斎行方法を啓発すべく、「『新しい生活様式』にあわせた祭典(神事)の心得」についてのチラシを作成し、氏子・崇敬者への配付や社頭での掲示など広く活用を勧奨してゐる。また感染症拡大防止対策の周知のため、各神社において編輯・印刷が可能なポスター制作ツールの運用に向けて準備を進めてゐるといふ。
 東京都神道青年会でも同様に、オリジナルのポスター制作ができるやうウェブサイトで素材データの提供を実施。このほか各神社庁や神社などでも新型感染症への対応として、ポスター・チラシなどの資材作成、神社参拝におけるガイドラインの取纏めなど、さまざまな取組みが進められてきてゐる。
 感染症の拡大防止に配慮した祭祀厳修のあり方について、引き続き各地での取組みに期待したい。また、さうした事例について広く情報を共有することで、より効果的な対応を図っていきたいものである。

 もとより情報の共有に際しては、それぞれにおいて責任ある情報の発信がなされてゐることが前提となる。本紙編輯部にも各地での取組みに関する報告記事が寄せられてをり、紙面を通じた情報共有などについても、より積極的に考へていきたい。例へば京都・八坂神社では神輿渡御を中止して馬上の神籬に神霊を遷して渡御する「御神霊渡御祭」を執りおこなひ、その様子は一般紙などでも報じられてゐる。
 またマスコミなどに取り上げられる機会はなくても、昨今は「フェイスブック」や「ツイッター」「インスタグラム」などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用することで、比較的簡単に情報を発信することが可能だ。情報を求める側においても、さうした新たなツールを利用して神社の参拝作法やしきたりなどについての知識を得るやうな傾向も見られる。
 これまで家庭や地域社会のなかで伝へられてきたことがSNSなどを通じて広まるやうな状況については少なからず懸念もあるが、斯界内部における情報共有のため、さらには一般への情報提供といふ意味でも、今後は各自による情報発信といふことがより重要性を増してくるのではなからうか。

 新型感染症の影響については感染者数をはじめ地域差が大きく、感染防止に係る認識にも開きがあるほか、神社の規模や職員数などによっても対応は異なってくるだらう。そのため統一的に詳細な対策を提示することは難しく、神社本庁が示す「祭祀の厳修」といふ原則に基づき、各神社庁・支部・神社それぞれが地域の実情に応じて対応を図っていくことが求められる。そして、より効果的な対策を講じていくためには、神社本庁・神社庁・支部・神社が密接に連携し、その活動について広く情報を共有していくことが大切ではなからうか。
 これまで斯界における情報共有といへば、教化会議などにおいて活動事例が紹介される機会もあったが、新型感染症を踏まへた「新しい生活様式」に即応し、一般に対してより丁寧に情報提供をおこなっていくためにも、まづはそれぞれが情報を発信していくやうなことも必要だらう。さらには、それらの情報を拾ひ上げて広く共有するやうな仕組み作りを考へ、その上で、斯界全体として有効な施策展開が図られていくことを大いに期待するものである。
令和二年八月三十一日

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