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野口雅弘著『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』 今野 元著『マックス・ヴェーバー―主体的人間の悲喜劇』 近代社会の特質を探求 人物像を知る評伝2篇

令和2年09月07日付 6面

 世界が新型コロナ感染症に震撼する今年、日本では、ちゃうど一世紀前の一九二〇年に「スペイン風邪」により五十六歳で急逝したドイツの社会学者マックス・ヴェーバー(ウェーバーとも)の、新書判伝記が二冊刊行された(以下著者名により「野口書」「今野書」と略記をお許しいただきたい)。

 日本知識人のヴェーバー観とその問題点については、野口書において、より明示的・具体的に指摘されてゐる。野口書は、ヴェーバーの生涯、種々の政治的事件に対する彼の態度、もちろん近代と「格闘」した重要な諸著作の内容とその背景、用語法、同時代及び以降のドイツ国内外研究者・思想家による評価を、入門書に相応しい読み易い配分で記述し、日本での特異な研究史考察にも一章を設けてゐる。

 これに対し、ヴェーバー研究の「伝記論的転回」を提唱する今野書はむしろ全体を以て、戦後日本的な特殊関心に偏ったヴェーバー理解の存在を前提に、それに疑問を呈してゐる。今野書は書翰資料を多用し、ヴェーバーと周囲の人間たちとの知的・政治的(時には感情的)「闘争」を行論の軸に、日本語でいふ「主体性」(「主体」は「Subjekt」の和訳用造語だが、今野は、通常「主権」「統治権」と訳される「Souveränität」を当てる)の追求こそ彼の人生の主題だった、と論じる。

 「近代的価値」を出発した我々がこれから何を目指すのか。ヴェーバー歿後百年間の世界史を踏まへつつ、彼の著作から改めて考へる上で知るべき著者像を、この両書は示してくれてゐる。
〈両書とも本体860円、『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』中央公論新社刊、『マックス・ヴェーバー ―主体的人間の悲喜劇』岩波書店刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學神道文化学部教授・菅浩二)
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