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杜に想ふ 生命継承の重さ 山谷えり子

令和2年09月07日付 5面

 短かった夏休みを終へて日焼けした通学の子供たちの姿に胸が熱くなる。
 それにしても少子化のスピードが止まらない。昨年一年間で生まれた赤ちゃんは八十六万四千人で、一昨年比で五万四千四百人も減ってゐる。団塊の世代は一年間におよそ二百七十万人が生まれてゐたといふから三分の一以下である。孫から“おばぁちゃんは小さい頃どんな遊びをしてゐたの?”と聞かれたので、“お相撲、おしくらまんじゅう、鬼ごっこ”と答へたが、どれもそれなりの人数が必要で、体のぶつけ合ひもできるぜいたくな時代だったなぁと思ふ。お相撲で男の子に投げられて骨折したこともあったが、ぜいたくな思ひ出である。
 政府が閣議決定した令和七年までの少子化施策の指針となる「第四次少子化社会対策大綱」は結婚支援、児童手当の拡充や三人以上の子供がゐる「多子世帯」支援、コロナ禍を受けてテレワークの活用など多様な働き方の推進、地域での子育て支援の充実など、従来の施策の枠を幅広いものとした。自民党もこれを受け少子化社会対策に関するプロジェクトチームを設置した。私も参画し、結婚、出産が幸福なことと思へる環境づくりに邁進したい。
 幼い頃、お正月のお年玉を祖父母にもらひにいくと「今年は昭和何年? 皇紀何年? 数へ年と満年齢は?」と質問され、全部答へられないとお年玉をもらへなかったものだ。今思へば、そんな会話の中で、中今人として生命を受け、歳神さまと共に生かされるわが身、そして生命継承の重さを感じさせてもらってゐたのかと思ふ。
 この数年間で官民主催の“婚活パーティー”も盛んになってゐるが、成婚率となると低調であるといふ。本気度にバラつきがあるのか主催者側も思ひあぐねてゐるらしい。
 平成六年の「エンゼルプラン」は、少子化の課題が“保育政策”に矮小化され、結婚や家族の価値を出すことは避けられ続けてきた。戦前の産めよ殖やせよをイメージさせる“人口政策”といふ言葉は使へず、個人の自由が強調されるばかりで、平成二十五年に出産適齢期やライフプランを考へてもらふ「女性手帳」を政府が制作しようとするやマスコミに批判されて断念せざるをえなかったこともあった。
 今回の大綱には祖父母との同居、近居支援が重点課題と記されるなど生命継承の視点も入れられてゐる。結婚、子育ての素晴らしさより、負担論のほうが幅をきかせがちであった視点から、コロナ禍にあって、家族と情愛継承の価値をまっすぐに見つめ直し、子供の遊び声が広がる希望の社会へとつなぐ歴史的転換点に私たちはゐると思ふ。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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