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論説 宮守制度 役割分担と相互扶助

令和2年10月19日付 2面

 前号掲載の通り、第二期となる過疎地域神社活性化推進委員会の第二回会合が十月二日に開かれ、来年からの過疎地域神社活性化推進施策実施要項の改正試案や、第一期から継続の検討事項である神職の後継者確保に向けた方途について議論した。
 このうち後継者確保については、「祭祀補助員(宮守制度)」の制度化に関して検討すべく、神職が常駐しない神社において社務所や近隣に居住し、神社の管理・保全・神札頒布、場合によっては祭典奉仕をも担ふ「宮守」「社番」「宮番」などと呼ばれる奉仕者への神職資格等の付与などについて意見が交はされた。
 会議では総代の育成強化の重要性などにも議論が及んだといふが、神職・総代をはじめ宮守などの関係者協力のもと、過疎地域における神社の祭祀厳修・護持運営が図られるやう、有効な施策が講じられることを切に望むものである。

 第一期の委員会における中間報告にも指摘があるやうに、この宮守制度については、これまで神社本庁の審議会等でその活用や神職資格の付与、神職資格に準ずる資格認定等について、さまざまな議論がなされてきた。
 過去の本紙を見ても、すでに昭和三十八年には教化指導者研修会において、兼務神社や神職不在の神社に宮守を置くことを検討してゐるとの事例が紹介され、同年に設置された神社審議会では準神職としての宮守の制度化について検討。「宮守研修会」での祭式作法や祝詞講読の実務研修の実施、元教員が氏子代表の宮守候補として神職資格の取得を目指してゐる事例なども記事として紹介されてゐる。また、昭和四十九年から翌年にかけて開催された本庁機構に関する委員会、同五十五年に設置された神社本庁制度運営に関する審議委員会、平成六年から八年にかけて実施された神職養成制度審議委員会などで、宮守への神職資格の付与を含め、その制度化についての検討が重ねられてきたことが報じられてゐる。

 さうした検討のなかでは、宮守制度の定義の曖昧さや、活動実態の地域差などから統一した制度化が困難と判断されてきた経緯があるといふ。
 今回の会議においては委員から、「地域によって必要とされる『宮守』の姿は異なる」「神職資格の付与は慎重であるべき」「奉仕内容を祭典の準備や介添へに限り、まづは過疎地域で導入してみてはどうか」などとの意見が出されてゐる。その制度化に際しては、これまでの議論の見直しはもとより、地域それぞれの「しきたり」などの歴史・伝統の確認、現代的な役割と意義付けなどを含め、慎重に議論していく必要があるだらう。
 今後の会議においてもさまざまな課題が指摘されることが予想され、短期間で結論を導き出すことは決して容易ではないかもしれない。ただ、後継者確保は過疎地域にとって喫緊かつ深刻な課題であり、まづは十分な議論が尽くされることを期待したい。

 かつて神職の理想像に関する議論のなかで、当屋制などを反映した「宮守的神職」と神道教化に携はるやうな「指導者的神職」とを想定し、それぞれの神職養成を考へるべきとの意見や、教化・祭祀・運営など神職による専門分担に関する提案もあった。もとより常時複数の神職が奉仕してゐれば神社内での専門分化も考へられるが、過疎地域などでは兼務社を含め一人の神職が教化・祭祀・運営のすべてを担はざるを得ないやうな現状があり、そのやうななかで総代・宮守などとの役割分担がおこなはれてきたのであらう。
 宮守の制度化を考へる上では、さうした神職の理想像についての考へも踏まへつつ、神職とは何か、神明奉仕に必要なこととは何かといふ基本に立ち返り、神職のあり方を問ひ直すやうなことも必要であらう。また新たな施策の改正試案においては、拠点となる神社・支部を選定して複数神社を支援するやうなことも検討されてゐるが、宮守を含めた役割分担に基づき、地域における相互扶助体制を構築するやうな方途も摸索してもらひたい。
 加へてかうした施策を通じて、過疎地域の神社に限らず歴史的に宮守などの地域の人々の篤い信仰と奉仕とによって神社が護持されてきたことを改めて確認したいものである。
令和二年十月十九日

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