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論説 敬神功労章 敬神生活のあるべき姿を

令和2年11月16日付 2面

 今年の敬神功労章授与式が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から中止となった。
 例年は春・秋の二回、神社本庁において授与式がおこなはれてゐるが、春の授与式は延期となり、秋に春・秋あはせての授与式開催も検討されてゐたものの、感染症の蔓延状況を踏まへて已むを得ずいづれも中止とし、受章者には各神社庁を通じて功績状を伝達することとなった。
 敬神功労章は神宮及び神社の役員・総代や氏子崇敬者で、とくにその功績顕著な方々に対し、その功績を顕彰して統理が授与するもの。特別功労章(金章)、功労章(銀章)、有功章(七宝章)の三等級が設けられ、神社による申請、各神社庁による内申、選考委員会の審査を経て授与が決定する。
 今年、神社本庁での授与式が中止となったのは残念なことであったが、長年に亙る奉仕神社の護持や神徳宣揚、氏子崇敬者の教化など、受章者各位の多大なる尽力に改めて深く敬意を表したい。

 今年は、春・秋を合はせて延べ四人が特別功労章、五人が功労章、三十三人が有功章を受章した。社殿改修や祭礼行事の振興への協力をはじめ、神社の由緒・歴史の調査や行事企画を通じた若者・新住民への働きかけ、日頃からの社殿や鎮守の杜の管理・保全、さらには祭礼時のお旅所の宿衛、初詣等における御祈祷の受付係、粥占神事の奉仕――等々、その功績は多岐に亙ってゐる。
 このうち若者・新住民への働きかけなどは、地域における共同体意識の稀薄化が指摘される昨今、時代を反映したものともいへ、地域共同体の精神的な核としての神社の存在を再確認させる意義深いものであらう。また、お旅所での宿衛や初詣等における御祈祷受付などは、華やかな祭礼行事や初詣の賑はひのなかで、ややもすれば地味で目立たない面もあるのかも知れないが、神社を陰で支へる欠かせない役割といへよう。

 かねて開催されてゐる神社本庁の過疎地域神社活性化推進委員会では、過疎地域における神職の後継者不足への対応として、神社の護持運営を担ってきた宮守や総代等による祭祀の補助などに関して議論がなされてきたが、これまでの敬神功労章の受章者のなかには、総代はもとより宮守としての奉仕者なども含まれてゐる。
 今年の受章者のなかにも、日々の参拝のなかで境内の管理・保全に努めてゐる方や、歴史のある粥占神事に奉仕し、その第一人者とされる方なども含まれてをり、神社が氏子崇敬者の協力によって守り伝へられてきたことが改めて窺へる。もちろん氏子崇敬者の神社との関はり方は地域によってさまざまだらうが、過疎化が進むなかで、神職と氏子崇敬者との連携による神社の護持、神事や祭礼行事の継承・振興に期待したい。
 加へて、先日の過疎地域神社活性化推進委員会の会合では、「後継者養成においては信仰心の涵養が第一義」との発言があったが、自らの信仰心に基づき私利私欲なく神明に奉仕する受章者の姿は、氏子崇敬者の亀鑑であるばかりでなく、神職にとっても模範とすべきものといへるのではなからうか。

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、いはゆる「三密」を回避することの重要性が強調され、神社においてもさまざまな対応がなされてゐる。しかしながら、本来神社においては多くの人々が集まることを前提とし、とくに神職と氏子崇敬者との密接な関はり合ひのなかで護持運営が図られてきたのである。「新しい生活様式」が提唱され、さうした神社のあり方を再検討するやうなことも求められてゐるが、日々の生活の核に神々への信仰を置くことの尊さや、神明奉仕にあたっての信仰心の大切さは今後も決して変はらないだらう。
 新型感染症の影響により新たな生活を摸索するなか、敬神功労章受章者の神明奉仕の姿勢なども手本としながら、敬神生活のあるべき姿を見つめ直したい。そのためにも今回の受章者に限らず、多くの方々の長年に亙る尽力に支へられて全国各地の神社が存在することを再確認するとともに、氏子崇敬者の功績に光を当てて顕彰するこの制度のさらなる周知と活用に期待するものである。
令和二年十一月十六日

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