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論説 心寄せ合ひ大御代の弥栄を 歳末の辞

令和2年12月21日付 2面

 新帝陛下御即位にともなふ大嘗祭を経て、清新な雰囲気のなかで迎へた令和二年も、あと残すところわづかとなり、本紙は今号が年内最終号となる。
 御代替りの一連の行事の関係では先月八日、秋篠宮文仁親王殿下の「立皇嗣宣明の儀」が執りおこなはれた。今年一年を顧みれば、この立皇嗣の礼が当初の四月から延期されることとなった原因でもある新型コロナウイルス感染症をめぐり、さまざまな対応に追はれた一年だったといへるだらう。
 二月初旬、横浜港に到着したクルーズ船における感染確認が報じられ始め、その後は国内でも感染が広がるなか三月末には東京五輪の延期が決定。四月初旬には緊急事態宣言が発出され、約一カ月半の外出自粛などを経て五月末には宣言解除となったものの、六月末以降は「第二波」、さらに現在は「第三波」ともいはれる感染拡大に見舞はれ、終熄の見通しが立たないなか年越しを迎へることとなりさうだ。改めて亡くなられた方々を悼むとともに、一日も早い終熄を祈念したい。

 斯界においては感染拡大のなかで祭祀の厳修に努めつつ、手水舎の柄杓や拝殿前の鈴緒などの使用を止めることをはじめ、マスク着用や手指消毒の徹底等を呼びかけたが、祭礼における神賑行事・直会の中止や規模縮小、大会・研修会等の延期や中止など各地でさまざまな対応を迫られた。
 参拝者の激減なども生じるなか、神社本庁では負担金の減免措置や財務状況の悪化した神社が財政上の建直しをおこなふための災害等対策資金の借り入れに係る特例措置などを実施。新型感染症の受け止め方の温度差や地域の感染状況の相違をはじめ、それぞれの神社が置かれた状況などから統一的な対応は難しい面もあるが、本庁・神社庁・神社の連携のもと広く情報を共有しつつ、より効果的な対応を図っていくことで、参拝者にいつもと変はらず安心・安全な祈りの場が提供されることを切に望むものである。

 今年は、『日本書紀』編纂千三百年、「教育勅語」渙発百三十年の節目にあたった。神代に遡るわが国の歴史を記した『日本書紀』はもとより、欧米に倣った近代化のなかでわが国の歴史・伝統に基づき国民教育の根本を示した「教育勅語」について考へることは、いづれもわが国の原点を見つめ直す機会ともなったはずである。
 「新しい生活様式」が提唱され、これまで当たり前に存在してゐたことの意義が改めて問はれるやうな状況においてこそ、わが国の原点、先人の歩みを再確認するやうな取組みが求められる。ただ残念ながら、『日本書紀』編纂や「教育勅語」渙発の節目を記念する各種行事等は新型感染症の影響などもあり、やや低調になったとの感は否めない。もとより周年等の節目は一つの契機に過ぎず、『日本書紀』「教育勅語」の意義を振り返ることに時期を選ぶ必要はないだらう。新型感染症を経験して社会の大きな変化も予測されるなか、わが国の歴史・伝統、その原点と先人の歩みを顧みることの重要性を再確認したい。

 新型感染症は経済活動を停滞させながら、人々の精神面にも悪影響を与へてゐるやうだ。先日、日本宗教連盟主催のセミナー「コロナ禍における宗教活動を考える―ウィズ・コロナの時代の宗教の在り方―」で講演した舘田一博日本感染症学会理事長は新型感染症について、「人や社会、国の分断を引き起こすもの」と指摘。確かにコロナ禍において、医療従事者に感謝を表現するやうな動きが広がる一方で、感染者をはじめ職業・国籍を理由にした誹謗中傷や県外居住者などへの差別的言動等も問題とされてゐる。いはゆる「三密」回避の流れのなかで、ややもすれば人々の心の繋がりも損なはれつつあるのではなからうか。
 神社は、歴史・伝統に基づく縦軸の繋がりと、地域の共同体を背景とする横軸の繋がりとの結節点に存在してきたともいへよう。さうした神社に奉仕する神社関係者として、誹謗中傷や差別による「分断」よりも、協調や団結を促す「繋がり」の大切さを訴へていきたい。それは、「人々が美しく心を寄せ合ふ中で、文化が生まれ育つ」との意味がこめられてゐるともいはれる「令和」の大御代の弥栄を祈ることにも通じるものと信じつつ、令和三年の新春を迎へたい。
令和二年十二月二十一・二十八日

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