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論説 新春を迎へて 異例の正月と国内外の課題

令和3年01月11日付 2面

 令和三年の新春はこれまでになかった異例の静かな年明けとなった。首都圏においては、政府や知事らにより年末年始の外出自粛など感染症対策の徹底が呼びかけられ、鉄道会社でも大晦日から元旦にかけての終夜運転を中止するなか、各所で例年ほどの賑はひは見られなかったやうだ。全国的にも多くの人々が外出を控へ、故郷への帰省などを諦めて自宅で過ごすことが多かったのではなからうか。
 皇室におかれては、新年を迎へて宮中祭祀をはじめ規模縮小の上で新年祝賀の儀が執りおこなはれる一方、恒例の一月二日の皇居一般参賀が中止になった。戦後の昭和二十三年に始まって以来、これまで宮殿造営に際してや昭和天皇の御不例・諒闇時を除いて続けられてきた新年の一般参賀だが、今回、国民が天皇御一家のお元気なお姿を拝することができなかったのは洵に残念なことであった。さうした状況のなか天皇陛下には、ビデオメッセージといふ形で全国民に向けて新年にあたっての「おことば」を述べられた。皇后陛下にも同席されて国民に語りかけられたが、これも初めてのことであった。

 昨年は新型コロナウイルス感染症に世界中の人々が翻弄された一年だったといへよう。わが国では四月に緊急事態宣言が発出され、国民に外出自粛の要請がなされるなど、人々のコロナ禍に対する不安と恐怖が増大した。経済活動はもとより、子供から大人に至るまで心身に与へた影響なども指摘されてをり、今年はさうしたことが一層顕著になる虞もある。官民が協力し合って対策に取り組んでいかねばならない。
 一方で米欧など諸外国と比較して、わが国の感染者数と死者数がこれまで桁違ひに少なく抑へられてゐるのも事実である。これは外国からも評価されてをり、日本民族が持つ神道的な清浄を尊ぶ精神や日常の良き生活習慣がその基礎となってゐることを、自信と誇りをもって再認識すべきであらう。
 いづれにせよ「皆が互ひに思ひやりを持って助け合ひ、支へ合ひながら、進んで行くことを心から願ってゐます」との叡慮を深く心に留め、この困難な試煉を乗り越えていきたい。

 目を世界に転じれば、新年最大の関心事は米国の大統領にバイデン氏が就任することだらう。その結果として米国の政治外交は「米国第一主義」から「国際協調主義」へと転換されることになりさうだが、注目すべきは激しく対立する米中関係の行方である。
 習近平国家首席が共産党独裁体制の強化を目指す中国は、国際法も人権も無視して香港を支配下に収め、わが国の尖閣諸島や台湾、さらに南シナ海から太平洋の島々に至るまで海洋覇権を拡大しつつある。中国の野望を抑へ込むには多国間の連携と協力が重要であり、その先導的指針となったのが安倍晋三前首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想であった。これに呼応した米豪印の各国と日本はすでに共同軍事演習を実施し、英仏独も軍艦派遣を表明してゐる。
 わが国としては環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の盟主として米国の呼び戻しに努め、国際法と航行の自由を守るために、菅義偉首相がバイデン新大統領と協力してこの構想の推進にあたってもらひたい。それは日米安保の運用面を一層強化し、尖閣諸島の防衛を図ることにも繋がる。

 菅首相には、安倍内閣から引き継いだ大事な二つの課題がある。一つは安定的な皇位継承の確保に向けた検討結果の国会報告であり、今一つは憲法改正の実現に向けて国会での議論の促進を図ることである。いづれも熱意をもって取り組んでもらはねばならない。 また今年は三月に東日本大震災の発生から十年を迎へる。改めて自然災害の恐ろしさを思ひ起こし、その教訓を活かして将来に備へるとともに、被災地復興に思ひを寄せたい。また七月には昨年延期された東京五輪の開催が予定されてゐる。ワクチンの早期普及による感染症収束を期待し、何とか開催に漕ぎ着けたいものだ。さらに秋までには衆議院の解散総選挙があり、菅政権の評価が下されることともなる。
 神社本庁設立七十五周年の節目にあたる今年、本紙も創刊七十五周年の節目を迎へる。改めてこれまでの先人の歩みを振り返りつつ、皇室国家はもとより斯界のために、それぞれ尽力していきたいものである。
令和三年一月十一日

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