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杜に想ふ 元気をもらふ旅 山谷えり子

令和3年02月01日付 4面

 厳しい現実の中で摸索が続いてゐるが、かういふ時だからこそ皇紀二六八一年の日本の底力に思ひをいたしたい。昨年は私も全国出張の機会が大幅に制限される中で、いや、だからこそ、むしろこれまでに訪ねた山、海、神社、歴史ある場所での人との出会ひからいただいた恵みについて考へる機会をいただいた。
 髙千穂神社の後藤俊彦宮司が「穏やかで明るい日本の始まりが高千穂で感じられたと多くの方が言はれます。一つの民族には十万年変はらぬ核心があるのでせう」と言はれ、熊野本宮大社の九鬼家隆宮司が「熊野古道は日本人の中に眠ってゐる深い古神道の心をよび醒ます力があると思ひます」と指摘されたことなどを思ひ出し、先人の営みの力か地霊の力か、閉塞感を打ち破るチャレンジ精神がよみがへってくるのを感じる。
 私は若い頃から自称「山ガール、島ガール」であった。学生時代はアルバイトでお金を貯めてはリュックを背負って長い時は一カ月ほども旅に出てゐた。各地の山に登り、海で泳ぎ、『古事記』や和歌集を片手にユースホステルに泊まって土地の人からの話を聞きながらの旅はまるで巡礼であり、日本を知る時空間を広げる旅であった。
 旅は、心が折れさうな時も思ひがけぬ方向からパワーを与へてくれる。中年になって、夫の交通事故死に続く私の選挙の落選と失業。当時三人の子供たちはまだ高校生などで途方に暮れてゐた頃に訪ねた早朝の出雲大社も忘れられない。
 「国譲り祀られましし大神の奇しき御業を偲びて止まず」といふ皇后陛下(現上皇后陛下)の歌碑の前で体がしびれて動けなくなったのである。
 何度も心の中で詠みこんでゐるうち、しゃちこばってゐた私の体に動的エネルギーが注入され、むくむくとチャレンジ精神が湧き起こる不思議を感じた。
 コロナ禍の前、国は外国人観光客急増もあって日本の歴史と文化と観光をつなぐ法改正と環境整備につとめてきた。国内外の人々にもっと先人の営みを感じ、体験してもらへるやう日本遺産をこの六年で百四件認定し、地方創生と一体で磨きあげてきた。私も自民党の文化立国調査会長として“日本の魅力を深く知らう”と政策立案に奮闘してきた。一昨年からおこなってきた日本遺産推進フォーラムを今年も二月十二日に党本部でオンライン参加も可能として開催することとしてゐる。
 現実は厳しくとも感染症対策をしながら近くを歩くだけで元気をもらふ旅の提言書『新しい「日本の歩き方」』を扶桑社から先週出版もした。アマゾンなどでも購入できるので、ネオ観光立国宣言の書を手にしてトンネルの先の光を見ていただければ幸ひである。私の祖国への恩返しの思ひをこめて記したものである。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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