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論説 東日本大震災から十年 復興への祈りと危機管理を

令和3年03月22日付 2面

 三月十一日に政府主催の東日本大震災十周年追悼式が、天皇・皇后両陛下御臨席のもと東京・千代田区の国立劇場でおこなはれた。
 天皇陛下には追悼式の「おことば」のなかで、「関係者の努力と地域の人々の協力により、復興が進んできたことを感じています」と述べられる一方、被災地には未ださまざまな課題が残ってゐることを御指摘。「復興が進む中にあっても、新しく築かれた地域社会に新たに人と人とのつながりを培っていく上では課題も多いと聞きます。家族や友人など親しい人を亡くしたり、あるいは住まいや仕事を失い、地域の人々と離れ離れになったりするなど生活環境が一変し、苦労を重ねている人々のことを思うと心が痛みます」との御感懐をお示しになられた。その上で、「困難な状況にある人々が、誰一人取り残されることなく、一日でも早く平穏な日常の暮らしを取り戻すことができるように、復興の歩みが着実に実を結んでいくよう、これからも私たち皆が心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います」とお述べになられてゐる。

 二万二千三百人余の死者・行方不明者を出した東日本大震災から十年を迎へ、マスメディアは挙って被災地の当時の状況と今日の姿とを伝へてゐる。この十年の間、災害公営住宅の建設や宅地造成、鉄道・道路の整備など生活基盤に関はる復興は確かに進んでゐる。ただ、多くの被災自治体で人口が大幅に減少するなか、利用されてゐない造成地が岩手・福島の両県で四割強、宮城県でも二割を超えてゐるとの報道もある。
 また本紙も前号等で、被災地における神社の現況を詳報した。東北三県をはじめ、地震と津波により本殿・幣殿・拝殿などの主要建造物が全半壊した約三百の神社では、それぞれ困難な状況のなかで神職・総代らの努力によって復興が進められてきたが、住民すなはち氏子の減少は神社の護持・運営において深刻な課題である。本紙記事からも、地域社会が元通りになっていかないといふ現実のなかで、多くの神職の悲痛な叫びが伝はってきた。

 わが国では、集落において氏神といふ共通の信仰対象を祀り、その氏神を精神的な核として地域社会を醸成させてきた歴史がある。また、そこでの祭りが共同体における構成員としての自覚を促すなど、地域社会の形成において重要な要素であったことはいまさらいふまでもなからう。
 被災地におけるこの十年の間には、神社での祭りをはじめ、それにともなふ神輿渡御や伝統的な郷土芸能の奉納など、祭礼行事によって地域社会の復興を期すやうな動きも見られ、さうした取組みは有効に機能してきたと信じるものである。祭りは、深い傷を負ったり、離れ離れになったりした住民たちの心を癒し、結び付けるやうな、地域社会の「共通言語」になり得るといふ期待は今も大きい。
 折からのコロナ禍は祭礼行事の自粛など、これまで少しづつ積み上げてきた復興への礎を揺るがしかねない現実を突きつけてゐる。被災地に限らず、神社の果たす役割の意義を再確認するとともに、改めて新型感染症の早期収束を祈念したい。

 地震や津波、さらには原発事故といふ未曽有の災害により、今もなほ四万一千人が避難生活を送ってをり、その大半が福島県の被災者だといふ。同県内の七市町村には、現在も放射線量が高く、避難指示すら解除されてゐない区域も残ってゐる。原発の廃炉作業が進められてゐるものの、事故の全容も未だ解明されてゐない状況に鑑みれば、軽はづみに「復興」などといふ言葉も口にできないのが現状だ。人と人との繋がりによって成り立つ故郷が、かつての姿を取り戻すまでの道筋は未だ見えにくいといはざるを得ない。
 東日本大震災以降も、これまでの想定を超えるやうな自然災害が生じてゐる。我々神社関係者は、共同体の紐帯を維持し、公共的な役割を担ふものとして、被災地における神社再建を未来永劫に亙って切に祈り続けるものである。東日本大震災十年の節目にあたり、神社が常に地域社会とともにあることを願ふとともに、それぞれの神社においても常に最悪の事態を想定し、その回避に向けた危機管理体制の構築が求められることを改めて肝に銘じたい。
令和三年三月二十二日

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