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旅する神々 神崎宣武著 神々の「旅」を通して 神話世界に想ひ巡らせ

令和3年03月29日付 6面

 折しも世界中が新型コロナウイルスによる感染症の猛威に晒され、先の見通せない閉塞感に社会全体が包まれる令和二年十一月下旬、外出や会食など、人々の行動が従前に比べて大きく制限される社会に在って、「旅」を冠する一冊の書籍が刊行された。民俗学者・神崎宣武氏の著した『旅する神々』がそれである。ただし、ここでの「旅」とは遊興的な旅行の類ではない。本書は、神々の「旅」に所縁の深い神話・伝承よりテーマを選び、旅する神の物語を通して、日本独自の神々と人々との関係を探らうとするものである。

 本書でいふところの「旅」とは、まさに神々が使命を帯びて生涯をかけたものであった。さうした神々の旅の上に、現在の日本が成り立ってゐるかと思ふと実に感慨深い。現代を生きる我々も、「疫病の災禍」といふ先行き不透明な旅路のさなかにあるが、やがて旅の終着点に至って行動制限も解かれた暁には、本書で示された神々に所縁の深い土地土地を訪ねて、遠く神話世界に想ひを馳せたいものである。
〈本体1700円、KADOKAWA刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(群馬・三島神社宮司、國學院大學研究開発推進機構助教 吉永博彰)

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