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論説 地位確認訴訟 大同団結に向けた解決の方途を

令和3年03月29日付 2面

 今号掲載の通り、神社本庁から不当に免職及び降格・減給の処分を受けたとして元参事二人が神社本庁を相手に処分の無効確認等を求めた民事訴訟の判決が三月十八日に東京地方裁判所であり、免職については雇用契約上の権利を有する地位にあることを、また、降格及び減給については無効であることを確認するとともに、神社本庁に未払ひ分給与等の支払ひが命じられた。
 神社本庁ではすでに判決当日の役員会で、未払ひ分給与等の支払ひに係る仮執行を回避するとの理由から、控訴と仮執行停止の申し立ての手続きを進めることを決議してゐる。このまま控訴審がおこなはれるのであれば最終的な結論としては未確定ではあるが、まづは三年五カ月に及んだ訴訟の地裁における判断を確認したい。

 判決では、解雇と降格・減給の処分に関して、解雇理由と処分理由についてのそれぞれの主張に基づき、その有効性などを検討。このうち、解雇理由に関しては四点のうち三点について「懲戒事由に(外形的に)該当する」としつつ、「公益通報者保護法の趣旨などに照らし、違法性が阻却され懲戒すべき行為に当たらないというべき」「解雇に相当するとはいえない」などと判断。残る一点については「懲戒事由に該当するとはいえない」とした。
 とくに百合丘職舎売却をめぐる役職員の背任行為などの存在を訴へた「檄―己自身と同僚及び諸先輩方を叱咤し、決起と奮起を求める」と題する文書の作成・交付については、関係者の「名誉を毀損するものであると同時に、被告(神社本庁)の信用を毀損し、被告の組織における秩序を乱す行為であると認められる」と指摘。その上で、「本件売買の価格は一般的な取引価額より低額であり、かつ、代金決済の方法が買主に有利である」「本件売買の価格決定及び承認の過程において取引通念上不審な点がある」ことなどを挙げ、背任行為は真実であるとは認められないものの、当時、原告が真実と信じるに足りる相当の理由があったと説示してゐる。
 また降格・減給の処分理由に関しては、四点のうち三点までを「懲戒事由に該当しない」とし、一点は「懲戒事由に該当する」ものの、「降格(現職を免じ、給与等級を下げる)とすることは、重きに失する」と判示した。

 判決は前述の通り原告の請求をほぼ全面的に認容し、神社本庁による処分を無効とするもので、細かな主張に関しての判断は、原告・被告ともに認められた部分と認められなかった部分があった。もちろん個々の事例についてはそれぞれの事案に基づき判断されるのだらうが、懲戒処分のあり方や公益通報者保護法への配慮など、各地の神社庁や神社などでも改めて慎重な対応が求められるものではなからうか。結論が導き出された過程について、それぞれが認識を深めておきたい。
 控訴を決議した判決直後の役員会、また翌日の庁長会においては、訴訟の報道が氏子崇敬者に与へる影響や費用面、勝訴の見込みなどを考慮し、その早期解決や控訴の取り下げを求める意見が寄せられた。全国各地の神社関係者の受け止め方もさまざまだらうが、斯界の将来を思ふ気持ちは、当事者を含め関係者に共通したものだと信じたい。訴訟がいたづらに長びくことは原告・被告のいづれにとっても決して望ましいことではなく、今後、解決までの道筋をしっかりと見据ゑた対応について叡智を結集して考へていきたい。

 神社本庁は終戦直後のGHQによる占領下において、神職・総代を含めた斯界の大同団結を大きな目的の一つとして設立されたはずである。その神社本庁において関係者同士による訴訟が続き、ややもすれば一部で分断を招くやうな事態が生じてゐることは極めて残念なことといへよう。訴訟について今後いかなる対応が図られるとしても、訴訟後の斯界が一致協力して歩んでいけるやう、その契機となるやうな方途が検討されることを期待したい。
 本庁設立から三十有余年を過ぎた時、神社運営が法律第一主義となって精神面の頽廃が見られたため、不文のままに守られてきた精神規範として神社本庁憲章が成文化された。それから四十年を経た今、設立時の精神のみならず長い歴史の中で培はれた神祀りの心を振り返り、その心持が世の修理固成に表されることを願ふものである。

令和三年三月二十九日

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