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論説 新年度を迎へ 困難を乗り越え将来の糧に

令和3年04月12日付 2面

 今年も桜前線が列島を北上するなかで新年度を迎へ、企業や学校では新社会人や新入生を受け入れての入社式・入学式がおこなはれてゐる。斯界における新年度は七月からだが、全国各地の神社では新たな奉職者を、また國學院大學・皇學館大学をはじめ各地の神職養成機関においても、それぞれ新たに学生を迎へ入れてゐる。
 昨年は四月七日に緊急事態宣言が発出されるなど、異例の状況で新年度を迎へた。今年は年明けからの二回目となる緊急事態宣言が二月八日に栃木県で、二月末日には大阪など六府県で、さらに三月二十一日には残る一都三県でそれぞれ解除されたものの、その後、大阪や東京などの大都市圏に限らず地方都市などでも感染の再拡大が見られ、大阪・兵庫・宮城の三府県を対象に「まん延防止等重点措置」の適用が決まるなど、引き続き感染症対策に追はれるなかでの新年度となった。
 オンラインでの入社式、父兄らの参列が叶はない入学式など昨年と同様に異例の状況ではあるが、まづは新社会人や新入生が順調に新たな生活を始められることを祈念して已まない。


 文部科学省や厚生労働省が発表した「令和二年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査」(二月一日現在)によれば、今春の大学卒業予定者の就職内定率は八九・五%になるといふ。「過去最低の水準」といはれた平成二十二年度の七七・四%以降、内定率は上昇傾向が続き、昨年は平成八年度の調査開始以降で同時期最高の九二・三%にまで達してゐたものの、今年は十年ぶりに低下に転じた。
 新型感染症の長期化にともなふ業績悪化などから、採用控へや内定取り消しなども報じられてゐる。学生に関してはさうした就職への影響に限らず、リモート授業が続くなかでの中途退学やアルバイト先の休業などによる経済的困窮、さらには若年層の自殺増加なども懸念されるところだ。かつての就職氷河期世代に対して国はやうやく支援策を講じ始めたが、現在の若者たちが「コロナ世代」などとして極端な不利益を蒙ることがないやう社会全体で見守っていきたい。


 一方、斯界における奉職状況については現在、本紙編輯部において恒例の調査がおこなはれてゐるが、幸ひ新型感染症にともなふ大きな影響は見られないやうだ。
 養成機関における学びの日々は、資格取得といふ目的のための授業はもとより、学生たちにとって極めて大切な時間である。とくに神職子弟にとっては、地元での暮らしのなかでは接する機会の少ない同じ境遇の仲間たちが集まり、悩みや苦労を共有しながら切磋琢磨する貴重な機会ともなる。昨年はさまざまな制約のなかで過ごすことも多かったことだらうが、それぞれ将来の神明奉仕を控へて有意義な学生生活を送ってほしい。
 このほか神職養成との関はりでは、かねて早期離職や養成所の入所者減少、地方における後継者不足などの課題もある。斯界の将来を担ふ人材を如何に育てるのか、そもそも如何なる神職を育てていくのか、養成はもとより奉職後の研修も含めて考へていかねばなるまい。


 新年度を迎へて一カ月も経てば、新緑のもと各地で恒例の祭礼行事が盛大に執りおこなはれる季節ともなる。感染症の蔓延状況に鑑み、すでに神輿渡御や神賑行事などを中止し、神事のみ斎行することを決めた神社もあるやうだが、二年続けてのことに今後の継承への影響も懸念される。昨年は想定外の事態に一部混乱なども見られたが、今年は昨年の経験を活かし、より良い対応が図られることを切に望みたい。
 非常時における祭礼行事のあり方を検討するに際しては、各行事の意義付けなどについて原点を顧みつつ確認するやうなことも求められる。この春から奉職した神職にとっても、ただ漫然と奉仕するのではなく、神明奉仕を始める段階でさうした経験をすることは、今後の長い神職としての人生においても大きな意味を持つだらう。
 昨年に引き続き異例の新年度を迎へるにあたり、新型感染症の早期終熄を祈念するとともに、不自由な日常のなかで新たな道を歩み始めた人々が、現在の困難な状況を乗り越え、さらにその経験を将来への糧ともしていくことを切に願ふものである。
令和三年四月十二日

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