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論説 皇位継承の有識者会議 皇室伝統の護持と啓発を

令和3年04月19日付 2面

 政府は「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について検討する有識者会議を設置し、活動を開始した。今回は、国会の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」を受けたもので、新型コロナウイルス感染症の影響もあって先送りされてきたが、菅義偉首相のもと三月二十三日にやうやく初回の会議が実施されてゐる。
 構成メンバーは、大学教授の学者ら四人に経済人と女優・作家を加へた六人で、そのうち四十代の比較的若い人が三人をり、男性と女性が均等に三人づつ選ばれてゐるのが注目される。座長は清家篤前慶應義塾塾長が務め、天皇制度を中心に法律や歴史などさまざまな専門的知見を持った人々から数回に分けて意見聴取していくことになる。四月八日開催の第二回の会議では、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のヒアリング対象者のなかから学者やジャーナリスト五人が選ばれ、最初の意見聴取がおこなはれた。

 男性の皇族数が減少し、将来的に皇位継承者の確保が危ぶまれるやうになるなか、政府が有識者会議等を設置して対策を検討するやうになったのは小泉純一郎首相の時が最初だった。
 二回目は民主党政権下の野田佳彦首相の時で、その際にはもっぱら女性皇族の減少と女性宮家案が検討課題とされた。その後、安倍晋三首相のもとで御譲位をめぐる議論があり、特例法に基づく御代替りがおこなはれた。この時の附帯決議に関してはこれまで、「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まへながら、慎重かつ丁寧に検討をおこなふ必要がある」との国会答弁が繰り返されてきた。今回、安倍政権を引き継いだ菅首相のもとで有識者会議が開催されることとなったが、皇位継承の基本原則に立ち、何よりも男系継承を第一義に皇室の伝統に則った本質的な議論を期待したい。

 有識者会議においては、どのやうな人物を選んで意見を求めるか、ヒアリング対象者の選定が格別に重要である。委員からは、前回のヒアリング対象者以外からも、「できる限り多方面の方々から」とか「多くの女性から」「若い年代の方から」といった意見とともに、「国民の中にどのやうに受け入れられるかといふ視点から、学者だけではなく、一般国民の感覚を表現していただける方からも」といった意見も出てゐる。
 常に国民に寄り添はれる天皇陛下のお姿に思ひを致せば、確かに一般国民の意識や感覚を知ることはとても大切である。しかしあまりにそこに信を置いては、単なる大衆迎合主義に陥る危険も大きい。とくにジェンダーをめぐり大きな流れがある今日、男女の平等や同権などの考へに基づいた一時の安易な世論の動向などに議論が傾くやうなことがあってはならない。国民統合の象徴としての天皇と皇族の制度については、建国以来、幾多の試煉を経て今日に至ってをり、それは一般国民とは異なる次元で深く考へてみることが必要なのである。信を置くべきは、やはり伝統とそれが持つ規範性や正統性でなければならない。

 今回の有識者会議で特筆すべきことは、何と言っても十項目のヒアリング事項のなかに「皇統に属する男系の男子を皇族とすることについて」の一項が入ったことであらう。そこで「養子縁組を可能とすること」と「新たに皇族とすること」の二つの方法を明示して、いかに考へるのか意見が求められてゐるのである。
 この問ひに対しては、本社が設置した「時の流れ研究会」においても、立皇嗣の礼がおこなはれる予定だった昨年四月十九日に「『皇位の安定的な継承を確保するための諸課題』についての見解―基本方針の確認と具体策の提言―」と題して検討結果を発表。適正規模の皇位継承資格者を確保するために元皇族の男系男子孫の適任者が皇族の身分を取得できるやうにすること、皇族間の養子を容認して現宮家の将来的な存続を可能にすることなどを提言し、皇室典範特例法等を検討しての立法整備を要望してきた(本紙、令和二年四月二十七日付)。斯界関係者においても今後の有識者会議の議論を注目して見守るとともに、皇室の伝統を護持していくことの重要性を啓発していかねばならない。

令和三年四月十九日

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