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論説 「こどもの数」 歴史・伝統に基づく意義確認を

令和3年05月24日付 2面

 総務省は五月五日の「こどもの日」に因み、四月一日現在における「こどもの数」(十五歳未満人口)の推計を発表した。
 発表によれば「こどもの数」は前年比十九万人減の千四百九十三万人。昭和五十七年から四十年連続の減少で、過去最少となった。この十五歳未満の「こどもの数」を三歳ごとに区切った数で見ると、十二歳から十四歳までの三百二十四万人に対し、零歳から二歳までは二百六十五万人となってをり、極端な減少傾向にあることがわかる。
 また、総人口に占める「こどもの数」の割合は昭和二十五年の三五・四%から一一・九%まで低下。一方、この間に六十五歳以上の割合が四・九%から二八・九%にまで上昇してゐる。「こどもの数」の割合は第二次ベビーブーム期後の昭和五十年から四十七年連続で過去最低を更新してをり、諸外国との比較でも最低水準だといふ。

 「こどもの数」は近い将来の生産年齢人口に直結し、労働者の中核である生産年齢人口の減少が、労働力不足、経済規模の縮小、社会保障制度の崩壊に繋がることは容易に想像がつく。
 かうした少子化の直接的な原因としては、非婚化・晩婚化・晩産化などが指摘されてきた。その背景には女性の就業率の高まり、男女の高学歴化、仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れ、子育てに対する負担感の増大、経済的に不安定な若者の増加、結婚・出産等に対する価値観の変化などが挙げられてをり、さうした要因が複合的に影響してゐるといへさうだ。
 また折からの新型コロナウイルスの蔓延により、医療体制の逼迫、妊婦健診への支障、故郷での里帰り出産への危惧などから妊娠を控へる傾向が見られ、さらにはコロナ禍のなかで出産と深く関はる婚姻数も減少してゐるといふ。改めて問題の大きさと原因・背景をしっかりと把握し、社会を挙げて対策を講じていかねばなるまい。

 もとより少子化は今に始まったことではない。内閣府によれば、「出生率が低下し、子供の数が減少すること」といった現在の意味で「少子化」といふ言葉が頻繁に使はれるやうになったのは、『平成四年度国民生活白書』において「少子社会の現状や課題について、政府の公的文書としては初めて解説・分析」をして以降のことだといふ。
 本紙でも平成二年の「主張」欄で西田廣義氏が、「『少子化』傾向が国民生活に及ぼす影響」として、労働力不足、関連産業の衰頽、家庭の機能低下などを指摘。「子供の出生は、その親の希望にもとづき考慮さるべきものではあるが、同時に親たちの願望をも超えた神のみはからひによって決せられるもの」などとの考へを述べつつ、「国民としても、出生の問題をまじめに考へる時機がきてゐるといってもいいのではあるまいか」との懸念を示してゐた。
 「少子化」に対する問題意識が生じてからすでに短くない歳月が経過し、この平成初年当時の十五歳未満の子供たちでさへ今では親の世代になってゐる。さうしたことからも効果的な施策を講じることが決して容易でないことは明らかである。政府与党などでは現在、子供関連のさまざまな施策を一元的に担ふ「こども庁」の創設を検討してゐるといふ。少子化対策についても、より有効な対応が図られることを期待したい。

 地域社会を存立基盤として護持運営が図られてきた神社においても、子供の絶対数が減るなかでの初宮参・七五三詣の減少などといった直接的な影響はもとより、少子化による地域社会の脆弱化は大きな課題といへる。また非婚化・晩婚化・晩産化は斯界内部においても例外ではなく、神職・総代の後継者確保、ひいては祭祀・祭礼の継承が深刻な問題となりつつある。
 もちろん少子化については斯界だけで解決できるやうな問題ではなく、子育て世代への支援などといった社会的な環境整備も重要だらう。それとともに、子を産み育てることの意義や家族・家庭の大切さ、人生の理想などについて神話以来の歴史・伝統を踏まへて再確認した上で、一方的な価値観の押し付けなどではなく、いはゆる「神のみはからひ」に基づく敬神生活のあり方として、それぞれが身を以て実践し、また語り伝へていくやうな取組みも神社関係者には求められるのではなからうか。
令和三年五月二十四日

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