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杜に想ふ 新たな獅子舞 八代 司

令和3年05月31日付 5面

 今年もコロナ禍の中で、全国各地で春祭りがおこなはれた。昨年来さまざまな行事等の中止との報を受け、いまでは慣れさへ感じ、ややもすると諸事をコロナのせゐにしてゐる自分自身もゐる。
 さて、桜咲き初める前、旧知の神社総代の方から電話があった。産土神社の社殿建設計画時はもとより、竣功時に至るまで微細に心を尽くされる敬神の念篤い方。その話とは、昨年に続いて、今年の春祭りも中止となれば、神賑行事の中心でもある獅子舞ができない。その担ひ手には、地元から離れて仕事をしてゐる氏子や学生も多く、将来的に若者の祭り離れが極めて心配されるため、各地ではどのやうな対応をおこなってゐるかを参考にするために聞かせてほしいとのことであった。
 当地で祭礼時に氏子町内の家々を巡る獅子舞の多くは、一抱へもある立派な木彫りの獅子頭が一般的で、多くは「かや」と呼ばれる麻製の胴体部分に複数の若者が入るもの。子供たちが奏でる笛や太鼓の音とも相俟って、相対する天狗との攻勢が見もので、なるほど「舞」との呼称宜しく、動作も軽快闊達なものが多い。しかしながら、祭りの代名詞でもある獅子舞は、コロナ発生時より密状態の最たるものと問題視され、中止もやむを得なかったのが各地域の実情。そのため、近郷近在の宮司さん方に伺った、神社の御神前に獅子頭を奉安して神事のみをおこなった例や、「かや」を被ることなく獅子頭のみを捧持して氏子地域を回ったとの実例をお伝へした。
 聞けば、今日まで伝承される獅子舞の曲目は全部で十三種類とのことで、その数の多さにも驚かされた。二年間も獅子舞をおこなへないことによる伝承への不安は察するに余りある。おそらく、これは全国の祭礼でも同様のことだらう。
 そのため、私見ですがとお断りをして、今年は「全曲目の映像記録を撮影」されたらと申し上げた。これは、所作や動きを記録するためとは言ふものの、あくまでも密を避けつつ若者が集ふことによって、通年のやうに氏子町内各戸を獅子舞が巡ることはおこなへないまでも、祭礼当日には社頭でだけででも何かしらの奉納をしたいとの青年団からの自発性を蔭ながらに期待してのこと。
 また御当地でこれまで伝承されてきた複数人で舞はれる形態の獅子舞だけではなく、この際、新たな獅子舞の創作を投げかけてみればとも申し上げた。テレビのお正月特別番組のオープニングで観られる緑色の唐草文様の胴体で一人立ちによる江戸太神楽のやうな形式は伊勢や熱田の太神楽が元ともされるもの。これであれば密を避けることができ、令和の御代に、疫病を除けて祓ふ意義を持つ十四番目がさらに追加されるのではと愚考を申し上げた。
 青葉の季、祖先よりの伝統を継承しつつ、さまざまな方途をめぐらせて、アフターコロナを見据ゑたい。
(まちづくりアドヴァイザー)

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