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論説 周年記念大会の延期 存在意義を見つめ直せ

令和3年05月31日付 2面

 五月二十六日に東京・明治神宮会館で挙行すべく準備が進められてゐた神社本庁の設立七十五周年記念大会が延期となった。
 周年の記念大会は当初、新型感染症拡大防止の観点から二千人ほどが入る会場に対し、参会者を九百人程度に留めた上での開催を検討。また大会当日は個別の受付を設けず、従前の周年記念大会では皇族の台臨、本庁総裁の臨席が通例となってゐたが、今回は案内を差し控へるなどの対策を講じつつ実施の予定だった。
 しかしながら四月二十五日から東京都が緊急事態宣言の対象となったことに伴ひ、翌二十六日付で参加者の健康と安全を第一に考慮して大会を延期することが全国神社庁長宛に通知された。新型コロナウイルス感染症の収束の目処が立たないなかで已むを得ないとはいへ、五年に一度、盛大に挙行されてきた周年記念大会の延期は洵に残念なことである。



 新型感染症はわが国での感染確認から一年半ほどを経た今も猛威を振るひ続け、各地で新規感染者数が過去最高を更新するやうな状況も見られてゐる。ワクチン接種が進められてはゐるものの、ウイルスの主体が従来型からより感染力の高い変異種へと移行してゐるとも報じられてをり、これまで以上に感染防止対策の徹底が求められてゐる。さうした対策の徹底が東京・大阪などの都市部以外でも重要となってゐることは明らかで、地方での新規感染者数が都市部を上回ることも珍しくない。政府や自治体が掲げて久しい人の流れの抑制に、国民挙げて取り組むべき時といへるだらう。
 斯界にとってもこの「人流抑制」は、多くの人出が予想されるこれからの夏祭りや秋祭り、さらには七五三詣から年始の初詣に向けた対策に繋がるものだ。今回の周年記念大会の延期のやうなことに関しても、開催地における緊急事態宣言の発出如何に拘らず、各地から会場に出向く人々の存在を視野に入れた対応が必要である。参加者の健康と安全を第一に考慮することは、ひいては各自が奉仕する全国神社の祭祀の厳修と護持運営に繋がってゐることも忘れてはならない。



 これまで周年の記念大会は、「明治以降物故神職・総代慰霊祭」と「記念式典」との二部構成で営まれてきた。このうち慰霊祭については、すでに昭和三十一年の設立十周年の際にも斎行されてゐる。七十五周年を迎へた現在においても、本庁設立後の関係物故者だけでなく近代神社制度の礎が築かれた明治以降の神職・総代たちを対象として祭典が執りおこなはれてゐることに重要な意義があるといへよう。
 「諸事¥文字(G0-B33B)武創業ノ始ニ原キ」との理想を掲げて成し遂げられた明治維新に際し、神社は「国家の宗祀」として位置付けられた。神職・総代などの神社関係者は国家・公共の祈りに携はるといふ自負と誇りを持ち、自らを律しつつ神明奉仕に励み、その理想の実現に邁進してきたのではなからうか。戦後、国家との直接的な関はりが失はれるなかにあっても、先人たちは「神社の精神の本質が、『日本人の社会国家の精神的基礎である』との信条」を大切にしてきたのである。周年の慰霊祭にあたり、さうした明治維新以来の先人の歩みを顧みることも大切だらう。



 昨年に引き続きコロナ禍も相俟ってさまざまな課題が山積するなかで、神社本庁の五月定例評議員会を中心とする斯界恒例の青葉会議の時期を迎へた。諸会合の多くが中止や延期となり、周年記念大会の翌日から予定されてゐた評議員会についても新型感染症の拡大防止の観点からウェブ会議システムを併用したいはゆるハイブリッド形式により、各地区から選出された常任委員による常任委員会としての開催に変更となってゐる。
 斯界ではこれまで、さまざまな課題に対して協力を図りつつ、その時々に最善とする対策を講じて結果を積み重ねてきた。現在のコロナ禍のなかでは膝をつき合はせ、腹を割って話し合ふやうな機会も設けにくいが、明治以降の神職・総代など先人たちの精神・理想に思ひを馳せながら、斯界の今後のあり方を真摯に考へていきたい。周年の記念大会は延期となったが、神社本庁の存在意義を見つめ直す七十五周年としなければならない。

令和三年五月三十一日

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