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杜に想ふ 体験の積み重ね 山谷えり子

令和3年06月07日付 4面

 若緑の苗が風に揺れる田園風景が嬉しい季節となった。ホタルの飛び交ふ地域も増えてきてゐるとかで嬉しいことである。子供たちが幼かった頃、梅雨時に「雨が降ると幼稚園でたくさん折り紙ができて嬉しいの」「紫陽花の下をかたつむりさんが歩くのを見ると嬉しいの」といふのを聞きながら、子供は喜びを見つける天才。生命のリズムに寄り添ふみづみづしさに教へられた記憶もよみがへる。
 永田町では子供の健やかな成長を願って教育と福祉などのタテ割り行政を見直す動きが進んでゐる。虐待や貧困問題が課題となる中、私は“子供らしい体験の場づくり”に尽力していきたいと思ふ。かつてのやうに原っぱがあちこちにあり、近所に遊び友達がわんさかゐた時代とは違ふ。そこで、時代の変化に合はせ、放課後の学校や地域を子供の解放区として整備し直していきたいと思ってゐる。
 二十数年前、東京の人口約八十万人の世田谷区で公立小学校のPTA会長と教育委員を務めたことがある。放課後の小学校を区内すべての小学生に開放し、地元のお稽古事の先生やおやぢの会の皆さんに協力いただき、季節行事の時は神社やお寺に御尽力いただいて、自然、文化、社会体験活動の充実に力をいれた。地域全体がビッグファミリーとして顔見知りが増え、躍動感が増していった。
 このところ、教育界やメディアでは「非認知能力」の大切さが言はれてゐる。人生百年、先が読みにくい時代を生きるには、好奇心や意慾、勤勉さ、協調性、共感力、柔軟性、道徳心、やり抜く力などが必要となるが、これはテストで高得点を目指す従来の学力のための教育ではなく、お稽古事や部活、行事などの体験の積み重ねで育つといふ研究結果に昨今集約されてきてゐる。なーんだ、“よく学び、よく遊べ”昔から大切にしてきたことを大切にし直せばいいといふことのやうである。
 私は現在国会で「武道議員連盟」「日本舞踊文化振興議員連盟」「能楽振興議員連盟」「落語議員連盟」「吟道議員連盟」「将棋文化振興議員連盟」「珠算教育振興議員連盟」「書道国会議員連盟」などの活動をしてゐるが、それぞれ関係するお稽古事の先生方は、子供たちにその道の素晴らしさを伝へたいと願ひ、なかには地元教育委員会の“学校で出前稽古します”などのリストに登録してゐる方もをられる。お稽古事は長く日本人の道を求める心や美しいたたずまひ、喜びを見出す感性を育て、日本独自の底力となってきた。
 貧富の格差ばかり言はれるが、体験の格差のほうも深刻である。“こども庁”のあり方を検討するため、自民党の「こども・若者」輝く未来創造本部で議論も進めてゐる。強く優しく、思ひやりと喜びの心に満ちた子供たちが育つやう努めたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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