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論説 国勢調査の速報 神社内外の環境変化を見据ゑ

令和3年07月12日付 2面

 総務省は六月二十五日、昨年実施した令和二年国勢調査の人口速報集計結果を発表した。今回の調査では、新型コロナウイルス感染症の影響により調査員確保が難航するなか、非接触の調査方法の導入、インターネット回答の勧奨などの対応を図るとともに、調査期間や審査期間を延長。速報値の発表は当初予定から四カ月遅れとなった。
 国勢調査の結果は、神社本庁にとって重要な歳入である負担金の按分率算定の基礎の一つとなってゐる。また現在、本庁施策の大きな柱として「本宗奉賛活動強化推進委員会」と「過疎地域神社活性化推進委員会」が設置されてをり、この七月から第三期「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」の二年目、第二期「過疎地域神社活性化推進施策」の初年度を迎へてゐる。世帯数の増減は神宮大麻の頒布率に関はり、人口の増減は過疎地に鎮座する神社の今後を左右するものともならう。
 第一回の国勢調査は大正九年におこなはれ、今回は実施百年目の節目にあたるといふ。「我が国に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査」の結果を踏まへ、今後の神社のあり方を考へていきたい。



 発表によれば、わが国の人口は一億二千六百二十二万七千人(令和二年十月一日現在)で、平成二十七年の前回調査から八十六万八千人の減少となった。人口増減率は前回調査時の〇・八%減から〇・七%減へとわづかながら減少幅が縮小してゐるが、その理由について総務省では、自然減は加速してゐるものの、日本で生活する外国人が大幅に増えたほか、新型感染症の影響で海外から帰国した日本人が多かったことなどを挙げてゐるといふ。
 この人口増減を都道府県別に見ると、東京・神奈川・埼玉など九都府県で増加してゐる一方、北海道・新潟・福島など三十八道府県で減少。秋田・岩手・青森などで減少率が大きくなってゐる。昨年来のコロナ禍のなか、大企業などを中心にテレワークの導入が進み、地方移住への関心が昂ったともいはれるが、都市部への人口集中は今後も続きさうだ。
 第二期「過疎地域神社活性化推進施策」では、施策の推進拠点となる神社・支部を選定し、相互扶助体制の構築を目指すといふ。さまざまな面で格差が指摘され、「勝ち組」「負け組」との言葉なども聞かれる昨今だからこそ、神社の護持を目的とする「相互扶助」の尊さを再認識したい。



 また、世帯数は五年前の前回調査から二百二十七万一千世帯増加し、五千五百七十二万世帯となった。
 神社本庁では昭和六十二年度から一千万家庭神宮大麻奉斎運動を始めたが、当時の国勢調査による世帯数は約三千八百十三万世帯で、現在までに千七百五十九万世帯ほど増加してゐる。一方で一世帯当たりの人員は当時の三・一七人から二・二七人まで減少し、最も少ない東京では一・九五人となった。
 わが国では戦後、急速に核家族化が進展し、さらに昨今は単身世帯の増加が顕著となってゐる。神宮大麻の奉斎を含めた家庭祭祀は、親から子、子から孫へと家族における縦の繋がりのなかで伝へられてきたのであり、さうした家庭の機能喪失をはじめ、社会的孤立の加速や地域社会の脆弱化などへの影響に鑑みても、一世帯当たりの人員減少は斯界にとって決して等閑視できない大きな課題といへよう。
 神社が基盤とする地域社会、その最小単位である家庭の変容に対し、家庭内における縦の繋がりの大切さなどを訴へ続けるとともに、さうした変容に応じた新たな対策の検討も求められるのではなからうか。



 今回の国勢調査に関する発表は「速報」で、より詳細な基本集計などの「確報」は今秋以降に順次発表される予定だといふ。
 もとより国勢調査は、全国二万一千人余の神職一人一人も対象としてをり、その意味では人口や世帯数の増減などは神社の基盤である地域社会や氏子・崇敬者の家庭だけでなく、斯界内部の神職一人一人の状況を反映したものでもある。国家としてのわが国の現状をはじめ、地域社会や家庭、さらには斯界内部の状況を再認識し、神社内外の環境の変化を見据ゑつつ、中・長期的な視点で今後の対策を考へていかねばならない。
令和三年七月十二日

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