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論説 新型感染症の拡大 大御心を体して心を一つに

令和3年09月06日付 2面

 暦の上では大気が冷えて露が生じる「白露」を間もなく迎へ、秋の深まりゆく時節ではあるが、いまだ各地で厳しい残暑に見舞はれてゐる。
 さうしたなか、新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。都内での新規感染者数は減少傾向も見られるものの、各地では新規感染者数が過去最多を更新するやうな日が続いてゐる。政府においてはこのほど、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域を追加。緊急事態宣言は二十一都道府県、重点措置は十二県に拡大され、対象は全国の七割に及ぶこととなった。
 ワクチン接種が進み、死者が百人以上の日もあった一月や二月、一日で二百人を超える死者が確認されたこともあった五月などと状況はやや異なるものの、重症者増加にともなふ医療体制の逼迫等も報じられてゐる。夏休みが明けて子供たちの学校が再開され、大学も順次講義が始まるなかで、状況の悪化も懸念されてゐる。改めて感染症対策に万全を期すとともに、一刻も早い事態の収拾を祈念したい。

 新型感染症については、ワクチン接種などの対策を含め、個々人の考へ方に温度差がある。とくに収束への道筋が見えないまま不自由な生活が続き、閉塞感も広がる昨今の状況のなかで、対応にあたる政府への厳しい意見も多く聞かれてきた。その政府においては、与党第一党である自由民主党の総裁選、さらには衆議院議員総選挙も控へるなかで、これまで以上に難しい舵取りが求められさうだ。
 天皇陛下には先の「全国戦没者追悼式」での「おことば」において厳しい感染状況に触れられつつ、「私たち皆がなお一層心を一つにし、力を合わせてこの困難を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」と述べられた。常に国安かれ、民安かれと祈られる陛下の大御心を体し、国民が一致協力して現在の国難ともいへる状況を乗り越えていかなければならない。

 斯界に目を向けても、新型感染症の影響は決して少なくない。一年延期となってゐた広島県での第五十六回全国神社総代会大会は、規模縮小の上で九月七日に開催を予定してゐたが、全国的な感染拡大を受けて已むなく中止を決定。今後も神宮大麻暦頒布始祭、五月から延期となってゐる神社本庁設立七十五周年記念大会、また十月定例評議員会などの日程が控へてゐる。各地の神社においても、これからの時期は収穫感謝の秋祭りがあり、さらに七五三詣が一段落する頃には、新年初詣の準備が始まることとなる。
 振り返れば今年は、前年末の大晦日に当時としては全国で過去最多となる新規感染者が確認され、年明けにかけて各地での感染拡大が報じられるなかでの異例の正月となった。その後もなかなか収束の目処が立たないなか各種の祭礼・行事などが昨年に続き規模縮小や中止を余儀なくされ、また参拝者や祈祷の減少をはじめ神社を支へる地域社会の疲弊、密閉・密集・密接を忌避するなかでの人的結びつきの喪失など、斯界においてもさまざまな影響が懸念されてゐる。
 今年も残すところあと四カ月。来年は無事に新年を迎へられるやう今から国民を挙げての対応に取り組みたい。

 コロナ禍を経験したことにより、かねて急速な社会生活の変化が予想されてゐる。とくに「テレワーク」「ウェブ会議」などに象徴される情報通信技術の活用をはじめ、さまざまな面でのデジタル化は加速しさうだ。一方で「不要不急」「自粛」などとの言葉のもとで、従来は当たり前だったことが見直されたり、その意義が問ひ直されたりするやうなこともあらう。コロナ禍を理由として大切な事柄が安易に切り捨てられたり、失はれたりすることがないやう慎重に見極めていきたい。
 また新型感染症の蔓延といふ想定外の事態においては、これまで主に対症療法的な対応が図られてきた。さうした対応のなかには、今後の常態化が許容されるものと、あくまで緊急時におけるその場凌ぎのこととして「コロナ後」には元に復すべきものとがあらう。コロナ禍が長期化するなかでのさまざまな変化・対応の可否について、これからの神社神道、さらには斯界のあり方を見据ゑつつ検討するやうな取組みも求められるのではなからうか。
令和三年九月六日

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