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論説 神道教学研究大会 本義の理解深め祭祀厳修を

令和3年09月27日付 2面

 前号掲載の通り、「神勅と祭祀」を主題とする第三十八回神社本庁神道教学研究大会が九月九日に開催された。
 昨年は新型コロナウイルス感染症の影響などに鑑みて中止し、代替措置として「疫病と祭祀」を主題とする講演動画を神職専用サイトで配信する神道教学講演会を実施。二年ぶりの開催となった今回は、感染防止の観点から会場の神社本庁大講堂における参加人数を制限した上で、基調講演や発題・共同討議がおこなはれた。ウェブ会議システムも併用し、共同討議に際しては会場から質問用紙の提出を受け付けるとともに、遠隔地の参加者からは電子メールで質問等を募った。
 コロナ禍のもとでの大会とはなったが、社会変化の加速が指摘される昨今、神話に遡る歴史・伝統を踏まへ神社神道の現代的意義をいかに認識すべきなのか、不易流行を見据ゑながら考へていくためにも、大会の成果が今後に活かされることを大いに期待したい。

 今回の大会は、昨年が撰進千三百年の節目にあたった『日本書紀』に、神勅や天皇・神宮・神社に関はる祭祀の淵源が記されてゐることを踏まへて開催。一昨年の御代替りに際して大嘗祭をはじめとする皇位継承儀礼が完遂されるなか、宮中祭祀・神宮祭祀・神社祭祀の本義や変遷については今後も継続して議論すべき事柄であるとの認識に基づく。また神社祭祀規程前文に「およそ祭祀とは神祇をひたすら奉斎し、神勅に明らかな報本反始の誠を捧げて、神威を発揚し神徳を敬仰すべきことをもつて本義とする」とあることなどを前提に、改めて神勅と祭祀の関係について教学的理解を深め、祭祀の意義の再確認、神社祭祀のさらなる厳修の一助とすることを趣旨とした。
 基調講演では、『日本書紀』についての註釈をめぐる歴史から研究等の概要が示され、続く発題においては、より具体的に近世の垂加神道や平田国学、近代の国学者・神職による神勅と祭祀をめぐる解釈などについて検討。共同討議では、神勅を踏まへた神社祭祀の意義などについて議論を深めた。神道教学は日々の神明奉仕の基盤である。大会を通じてその深化・滲透が図られ、さらなる祭祀厳修に繋がることを切に望むものである。

 各氏からの発題においては、垂加神道における認識として、天照大神から皇孫守護を命じられた宗像三女神の神徳をすべての神が持つといふ理解を背景に、山崎闇斎が「日本国中大小神祇之本体皆此神也、故凡神社皆神籬也」(『風水草』)と主張したことや、高皇産霊尊による「神籬磐境の神勅」について、特定の神や司祭者のみに限定されるのではなく、全国の神社が皇孫守護のための「神籬」であるとする考へ方が紹介された。また、この「神籬」の理解として、歴史的には八神殿・神祇官を指すとの解釈が一般的であったが、近代の神祇官興復運動をめぐる神社界の議論のなかで、「神籬磐境の神勅」を八神殿だけでなく神社の起源・根拠と捉へ、「神籬」は全国の神社をあらはすとする見方が公式には主流となっていったことなども示された。
 かうした認識は各地の神社における祭祀について、宮中祭祀や神宮祭祀との関係性のなかで考へていく上でも、一つの重要な視点といへる。

 基調講演をはじめ発題・共同討議を通じ、神代に起源する祭祀の意義等について、『日本書紀』をはじめとする古典に基づき、さまざまな主体・立場により研究が重ねられ、その時々の歴史的背景なども前提に解釈されてきたことが確認された。
 戦後設立された神社本庁でも、かうした研究・解釈の積み重ねを踏まへて教学的な位置付けが示され、『神社本庁憲章の解説』における「神社祭祀の本義」についての説明部分においては、「神籬磐境の神勅」を引用した上で「神社祭祀の本義はこゝに示されてゐると信ずる。即ち大御代の弥栄、皇運の御隆昌を祈ることによって、国家の平安、国民の景福は全うされる」と記されてゐるのである。
 神社祭祀の本義は、日々祝詞で奏上するやうに「天皇の大御代の弥栄」を祈ることにあらう。先人たちの営為を顧み、また神明奉仕の実践を通じて理解を深めながら、氏子崇敬者などにも広く発信できるやう神職一人一人が努めなければならない。
令和三年九月二十七日

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