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杜に想ふ 匠の継承 山谷えり子

令和3年10月04日付 4面

 味覚の秋、本番。
 カキやミカンが色づいて甘味を増し、これからはリンゴやブドウ、ミカン狩り、イモ掘りのシーズンである。シベリアから白鳥が渡ってくる日も近い。
 結婚式のシーズンも本番で、七五三の喜びの姿もいち早くあちこちの神社で見られるやうになった。コロナ禍のガマンはもう少し続かうが、それだからこそ、季節の変化や古くから大切にされてきた行事をいとほしみたいと思ふ。
 文化の秋も本番である。
 現在私は自民党の文化関係の会長をしてゐるが、「文化立国日本」の基盤強化のため来年度の概算要求は二二%増でおこなひ、とくに文化財の継承のため国宝や重要文化財の安定的な修理、保存と修理に携はる技術者の育成、原材料の確保に向けた支援を全力で進めていきたいと考へてゐる。具体的には、来年度から五カ年計画で「文化財の匠プロジェクト」を進め、国立の文化財修理センター(仮称)なども建設するなど、政府と共に成果をあげていく考へである。
 実は、ここのところ国宝、重要文化財、史跡名勝で修理要望があっても措置が十分できない状態が続いてゐる。災害で被災する文化財も多いが、事業期間の見通しが立たずに着手できないところが増え、その間にも劣化が進み、原材料生産者と技術者の高齢化が進んで深刻化していくといふ悪循環となってゐる。これを何としても止めねばならない。
 文化庁が文化財の修理技術や材料、道具の製作技術など選定保存技術と位置づけた保持者は五十四人、三十九団体が認定支援されてゐるだけで、保持者の平均年齢は七十三歳と実に継承が心もとない。「文化財の匠プロジェクト」により、対象技術を増やし、若い人への研修費用も大きく補助して明るい未来を見ながら生活が成り立つやうにしていかねばならない。保存と公開のあり方なども国民の共感がえられるやうな仕組みづくりが必要である。そこで積極的に現場に足を運び、ヒアリングをおこなって、国会議員たちと問題意識を共有し、先月、文化財の保存、継承のため修理事業の事業量の安定的確保と、修理周期の適正化を計画的に推進していくための決議を取りまとめた。新内閣の関係閣僚たちに施策の推進を強く求めていくつもりである。
 文化は日本の力の源泉である。我々の生活に潤ひをもたらし、人と人をつなぎ、地域の活力を生んでいく。長い歴史の中で磨かれ受け継がれてきたものの魅力、尊さが継承されていくためには、子供たちが多様な文化に親しむ環境の整備もポイントとなる。オンライン教育が猛スピードで進む中だからこそ、伝統文化に触れる体験を提供し、真の文化立国実現に邁進していきたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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