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論説 神宮大麻暦頒布始祭 百五十周年の節目を控へ

令和3年10月04日付 2面

 前号掲載の通り、九月十七日に伊勢の神宮で神宮大麻暦頒布始祭が斎行され、小松揮世久神宮大宮司より鷹司尚武神社本庁統理に神宮大麻・暦が授けられた。
 昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から参列規模を縮小し、神楽殿では神宮大麻・暦を各都道府県神社庁長へ頒たず、祭典後に内宮参集殿で「神宮大麻暦頒布始祭にて奉安の神宮大麻及暦授与式」が執りおこなはれてゐる。今年は三重県を含む十九都道府県が緊急事態宣言の、また八県がまん延防止等重点措置の対象となるなか、参列を常務理事までに限定しての斎行となった。
 昨年以上に厳しい状況のなかでの異例の神宮大麻暦頒布始祭にあたり、改めて新型感染症の早期収束を祈念するとともに、今後の各地での頒布活動が関係者の尽力のもと無事に執りおこなはれることを切に願ふものである。

 例年祭典にあはせ、神宮大麻・暦の交付数や本庁施策の説明、活動事例の報告等をおこなふ神宮大麻暦頒布秋季推進会議及び表彰式が開催されてきたが、さうした会合等も中止となった。来年の神宮大麻全国頒布百五十周年を控へ、神社本庁では全国的な広報活動の展開など各種の記念事業を計画してをり、そのやうな情報も広く共有しながら斯界挙げて強力な活動推進が期待されるなか、已むを得ない状況とはいへ残念なことである。
 各地でもコロナ禍のなかで神宮大麻・暦の頒布に係る研修会などの開催が困難となってゐることに鑑み、神社本庁では頒布奉仕者の自覚を促すとともに意識の向上を図ることを目的として、神職用教本「神宮大麻全国頒布百五十周年記念 全国の神社がなぜ神宮大麻を頒布するのか」を発行した。かうした冊子なども活用しながら、神宮大麻全国頒布の歴史と意義をはじめ、神宮を本宗と仰ぐ所以、神宮の神徳宣揚と神社神道の興隆との関係性などについて改めて理解を深め、今後の活動推進に繋げていきたい。

 神宮大麻の頒布施策に関しては、平成二十六年度から三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画を実施。今年度は第三期の二年目にあたり、前期に引き続き「氏子区域の実態調査」と「頒布奉仕者の意識向上」を重要課題として全国で活動が展開されてゐる。
 初年度を終へての神社庁からの活動報告によれば、コロナ禍における対応として「戸別頒布より社頭頒布を推進した」「専門家による感染予防対策研修会を開催」などとの事例が見られるほか、「感染拡大防止を理由に頒布協力を断る奉仕者があった」「コロナ禍で前年との比較ができず成果も把握しにくい」などといった課題も挙げられてをり、コロナ禍といふ特殊な事情のもとでの工夫と苦労が窺へる。
 コロナ禍においては、企業による在宅勤務の導入や遠方への外出自粛の要請等から、自宅・地元で過ごす時間が増えたことなどの影響もあってか、朝夕の散歩などの途中に氏神神社に立ち寄る近隣住民の姿が増えたといふ声も聞く。かねて氏子意識の稀薄化、氏神神社の認知度低下が課題となるなか、かうしたコロナ禍の状況を今後の氏子と氏神神社との関係性構築に向けた一つの契機ともしたいものである。

 明治五年四月一日、伊勢の神宮での「神宮大麻御璽奉行式」において時の北小路随光神宮大宮司は、「天皇の大命以て天の益人等に朝に夕に皇大御神の大前を慎敬ひ拝令め給ふと為て、今年より始て畏き大御璽を天下の人民の家々に漏落る事無く頒給はむとす」との祝詞を奏上。明治天皇の大御心を体した公的な「大御璽」として、神宮大麻の全国頒布が始められたのである。それから来年で百五十周年を迎へるが、この間、頒布主体の変遷や終戦直後の混乱などを経つつ、神宮大麻の全国頒布そして国民の神宮崇敬は連綿と受け継がれてきた。
 神宮大麻暦頒布始祭を終へ、今後は各都道府県神社庁、支部、神社を通じて神宮大麻・暦が全国の各家庭に頒布されることとなる。昨年に続きコロナ禍のなかでの頒布奉仕には一層の苦労がともなふことともならうが、各地からの活動報告なども参考にしつつ、神宮大麻が「天下の人民の家々に漏落る事無く」頒布されるやう斯界を挙げて取組みを進めたい。
令和三年十月四日

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