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【新刊紹介】岡野友彦著『中世伊勢神宮の信仰と社会』多岐に亙る視点で 中世の神宮を俯瞰

令和3年10月11日付 6面

 岡野友彦氏著『中世伊勢神宮の信仰と社会』は中世の神宮を俯瞰したもので、従って内容は多岐に亙ってゐる。律令体制が衰頽していく中で、神宮がどのやうに対応したかを詳細に検討した一書である。内容は序章に簡潔に紹介されてゐるが、評者の個人的見解を言へば、私幣禁断に視点を据ゑて著述されてゐるやうに思はれる。

 古代には、律令制により神戸や神郡によって神宮経済は守られてゐたが、古代中期から大中臣祭主や同姓の宮司が神郡を私物化し、荒木田・度会両氏すなはち禰宜層と鋭く対立した。著者は御厨・御園が神宮経済といふより、禰宜層の経済的基盤となったと的確な指摘をしてゐる。その上で中世の宇治・山田は禰宜である荒木田・度会両氏が集住する京都や奈良、そして鎌倉のやうな権門都市に匹敵するやうな都市へと変貌したと指摘してゐる。神宮と御厨・御園を繋ぐ禰宜層は口入神主と呼ばれ、私幣禁断であるはずの神宮へ幣帛を奉る道を開いた。次に重要な点は、この口入神主は、後世の御師とは、系譜的には繋がらない、と結論付けてゐる点である。卓見といへよう。

〈税込1575円、皇學館大学出版部刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(国士舘大学教授・藤森馨)
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岡野 友彦 / 皇學館大学出版部
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