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論説 歳末の辞 先人の思ひと変化を踏まへ

令和3年12月20日付 2面

 令和三年も残すところあとわづかとなり、本紙は今号で年内最終号となる。
 昨年末の大晦日に、当時としては過去最多となる新型コロナウイルス感染症の新規感染者数を記録するなど、全国的に感染症が蔓延するなかで迎へた令和三年。その後も東京五輪を前に再拡大が見られたものの、現在はやや収束傾向にあるといへよう。ただし欧米や隣国の韓国などで多くの感染者が確認されてをり、新たな変異株への懸念もあるなか、今月初めから医療従事者らを対象とする三回目のワクチン接種が始まってゐる。
 この一年は、昨年に引き続きコロナ禍に翻弄され、とくに夏期には医療体制の逼迫、救急搬送困難事案の増加、自宅療養者の死亡など深刻な状況も生じた。また長引くコロナ禍における生活困窮者の存在を含め、経済・生活の再建が課題となってゐる。間もなく丸二年となるコロナ禍の先行きは未だ不透明なままといはざるを得ず、改めて新型感染症の一日も早い収束を祈念したい。

 政府は今年三月、「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」を設置。五回の有識者ヒアリングにおいて二十一人から意見を聴取しつつ、これまで十二回に亙って議論を重ねてきた。
 十二月六日に開催された会合で示された報告書骨子案には、皇族数確保の具体的方策として「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とすること」「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること」などが盛り込まれてゐる。また七月の会合では「今後の整理の方向性について」として、「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」ことが示されてゐた。
 斯界においても、安定的な皇位継承の実現に向けて元皇族の男系男子孫が皇族の身分を取得できるやうにすることなどを提言してきた。年内にも取り纏められるといふ有識者会議の最終答申を前提に政府で検討を進めた上で、国会において真摯な議論が交はされることを切に望むものである。

 神社界でもこの一年は、昨年に続きコロナ禍への対応を迫られた。五月に予定されてゐた神社本庁設立七十五周年記念大会は十月に延期となり、規模縮小の上で挙行。定例評議員会や各種会合・研修会なども開催形態の変更や人数制限などを含め、それぞれ感染症対策を講じながら実施されてゐる。また各神社においても祭祀厳修に努めつつ、神賑行事・奉納行事の規模縮小などを余儀なくされてきた。
 一方でコロナ禍が長期化するなか、会議や研修会において積極的にウェブ会議システムを活用したり、祭礼にあたり神輿渡御の代替措置を講じたりするなど、さまざまな対応・工夫が滲透しつつあるやうな状況も見受けられる。さうした事例はさまざまあって一様に論じられないが、場合によっては信仰上の位置付けなど教学的観点からの共通理解などが必要なこともあるのではなからうか。昨年来、新型感染症による想定外の状況のなかで対症療法的に対応してきた事柄について、社会の変化も踏まへつつ、斯界として認識の共有を図っていきたい。

 神社本庁設立七十五周年を経て迎へる来年は、その本庁の設立をはじめ戦後の神社界を牽引した葦津珍彦の歿後三十年にもあたってゐる。さうしたなかで、葦津をはじめ神社本庁草創期の先人たちを直接に知る人々は次第に少なくなりつつあり、今年はそのやうな思ひを改めて感じさせられた。よく時代の転換期との表現がなされるが、今もまさしくさうした時期といふことができるのではなからうか。
 七十五年の歴史を経るなかで神社本庁には制度疲労もあらうし、またコロナ禍の影響を含め、内外の人々の意識や感覚も大きく変化してゐる。常に現状を確認しながら、時代にそぐはないことや不備があれば、改善の方途を協議・検討していくことが求められよう。神社をめぐる社会環境が大きく変化していくなかで、先人たちの思ひをいかに継承しつつ、現代に相応しいあり方を摸索していくのか。時代の転換期にあることを覚悟しつつ、決意新たに新年を迎へたい。
令和三年十二月二十・二十七日

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