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鎮守の森の過去・現在・未来~そこが知りたい社叢学~ 都市における歴史的緑地としての社叢 NPO法人社叢学会副理事長 糸谷 正俊 ㈱総合計画機構相談役

令和4年05月02日付 5面

歴史的緑地として 捉へる社叢の姿は

 日本は近代化の中で種々の開発が進み、土地利用、景観、生活様式等が激変してきた。とくに高度経済成長の下では、住宅、工場等の大規模開発が進み、急激な都市化が進展。昭和二十年から三十年代前半にはまだ残されてゐた昔ながらの風景は一変し、全国隅々にまで開発の波が押し寄せた。
 このやうな変化の中で、からうじて現代に残されてきたものが歴史的な緑地。いはゆる鎮守の森、寺院の森、古墳の森、塚の木立、名園(寺院庭園、大名庭園、大きな個人庭園等)、景勝地、屋敷林などである。
 これらの歴史的緑地は、変化の激しい都市にあって郷土性を残し、市民のアイデンティティとなってゐるほか、緑地の多面的効果(良好な自然環境や美しい景観の提供、自然とのふれあひ、憩ひの場、災害時の防災効果、コミュニティ形成など)を有し、都市の暮らしに欠かすことのできない存在となってゐる。なかでも社叢は、図のやうに歴史的緑地の中で利用価値といふ機能性よりも、精神的、祭祀的、共同体的な存在であることの社会的価値が大きい。経済社会の進展の中で失はれつつある心の充足に寄与するものとして重要な位置づけができる。

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