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論説 斯界の奉職状況将来担ふ人材の育成を

令和4年05月02日付 2面

 新年度となって一カ月が経過し、若葉の鮮やかな新緑の季節を迎へた。全国各地の神社では新たな奉職者を受け入れ、また皇學館大学・國學院大學をはじめ各地の神職養成機関でも新入生が入学し、それぞれ新たな生活が始まってゐる。
 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、昨年・一昨年に続いて感染対策を講じながらの新年度のスタートとなり、現在も感染者数の増加が報じられてゐる地域もあるものの、重症化率等が比較的低く抑へられてゐることなどから、「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の発出までには至ってゐない。
 引き続き感染対策を講じながらの日々ではあるが、新たな奉職者や養成機関の新入生たちが、それぞれ希望に満ちた新たな生活を始められてゐることを願ひつつ、その斯界における今後の活躍に期待したい。

 前号掲載の通り、文部科学省・厚生労働省が公表した「令和四年三月大学等卒業予定者の就職内定状況」(二月一日現在)によれば、大学生の就職内定率は八九・七%で前年同期と比べて〇・二ポイント増加。十年ぶりに内定率低下となった昨年に比べ、わづかではあるが増加に転じた結果となった。
 コロナ禍が長引くなか、これまで採用を控へてゐた企業が採用活動を再開するやうな事例も聞かれるものの、年明けからのオミクロン株による感染者増加や、ロシアによるウクライナ侵攻にともなふ世界経済への先行き不安なども影響したやうだ。さうした一方、コロナ禍において都市部での生活が見直されるなかで、地方出身の学生が都市部の大学卒業後に故郷で就職する「Uターン就職」や、都市部出身の学生が地方で就職する「Ⅰターン就職」を希望するやうな傾向も見られるといふ。
 かねてコロナ禍の経験にともなふ社会の変化が指摘されてきたが、都市部の大企業などでは現在もいはゆる「在宅ワーク」を継続してゐる事例もあり、コロナ禍にともなふ働き方の変化、その常態化が進んでゐるやうな様子も窺へる。さうした変化は学生の就職活動に対する意識にも少なからず影響を与へてゐるといへさうだ。

 斯界における奉職状況に関しては、この春に各地の養成期間を巣立った百八十人ほどが神職・巫女・事務員などとして全国各地の神社等に奉職してゐるといふ。
 これまで女子や年齢が高い学生の奉職については厳しい現実があり、また一般家庭出身者の奉職希望先が都市部に偏るなどといったことも懸案となってきた。ただ養成機関への取材によれば、昨今の新たな動きとして神社側に女子学生の採用に前向きな姿勢が見られるほか、「全国各地の神社に奉職する傾向があった」との声も聞かれるなど、先述の一般の就職と同様に「Uターン就職」「Ⅰターン就職」の希望もあるやうだ。
 かうした学生たちの奉職希望先についての新たな動向は、これまで都市部への一極集中が課題となるなか、地方の振興といった観点からも歓迎されるものであらう。斯界としても、地方における後継者不足の解消に向けた一助となることを期待したい。
 未だコロナ禍の続く厳しい状況のなかではあるが、女子学生を含め、新たな奉職者を迎へ入れた各地の神社においては、斯界、そして地域社会の将来を担ふべき人材として、その育成に尽力したいものである。

 神職養成における高等機関として位置付けられてゐる皇學館大学と國學院大學は今年、それぞれ創立百四十周年の佳節を迎へる。少子化の進展等により以前から「大学冬の時代」「大学淘汰の時代」などといはれるやうに、大学運営にはさまざまな困難がともなふなか、両大学の役員や教職員の労苦は想像に余りある。
 全国各地の神社からは例年のやうに神職資格取得予定者を上回る求人が寄せられるなど、斯界は両大学による神職養成に大きな期待と関心を寄せてきた。かねて人的資源の劣化を指摘する声も聞かれるなか、養成機関による有為な人材の輩出は、将来的な斯界全体の興隆・発展に直結していくからだ。
 斯界としても将来を担ふ人材の育成の大切さを再確認し、各養成機関との密接な連携・協力のもと神職の養成・研修の充実に努めていかねばならない。
令和四年五月二日

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