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杜に想ふ お天気と言霊 涼恵

令和4年06月13日付 5面

 先月、娘が通ふ小学校の運動会が規模を縮小されつつも無事に開催された。
 運動会当日の天気予報は雨。前日から娘はベランダにお手製のてるてる坊主を吊るして、元気な声で「てーる坊主てる坊主、明日天気にしておくれー」と歌ってゐた。
 翌朝、目が覚めると曇り空。雨は降ってゐない。午前六時、学校から予定通り開催するとの連絡が入り、ホッとした。コロナ禍の影響を受け、親の見学は低・中・高学年の二学年ごとに時間差で入場が許可された。
 娘の競技が始まる時間に合はせて学校へ向かはうと外へ出ると、何やら雲行きが怪しい。午前十一時、学校へ到着する頃には雨は本降りになってゐた。競技は一時中断するとのアナウンスが流れた。テントのなかで待つ子供たち。雨はまだ止みさうにない。
 暫くすると、一、二年生の子供たちの間から声が挙がった。「晴ーれろ! はぁーれぇーろっ!」散り散りだったその声はすぐに伝播して、全校生徒が「晴れろ!」と口を揃へて空に歌った。なんとも可愛らしく素直な合唱が運動場に響き渡る。
 それに応へるかのやうに、空の様子はみるみる変化していった。雨雲から光が差してきて、数分後に雨は上がったのだ!
 「雨が治まったので、競技を再開します」とアナウンスが流れると、子供たちは立ち上がって喜んだ。
 雲居切れの美しい空を見上げながら、じいんと心が熱くなった。人間と自然との関係性、子供たちの純粋な心は天にまで通じるもの。また想ひを言葉として発することで現象が可視化されてゆく神祕を目の当たりにした。言霊の力とは、こんなにも強く陽気なのだと、子供たちから教はった。
 以前にも、娘が幼稚園の頃に参加した運動会のことをこちらに綴らせてもらったことがある。頑張る生徒たちの姿、見守る先生方や親御さんの温かい眼差しに感動した。教育の現場は、世代も視点も立場も違ふあらゆる方向から捉へて一人一人に合はせた学びを見つけられるやう工夫されてゐるのだと思ふ。
 徒競走などの個人戦、綱引きなどの団体戦では、勝ち負けではなく、緊張に打ち勝つ心や力を合はせる尊さを学ぶ。
 学年ごとに見合った表現運動では、里神楽やお囃子といった民俗芸能から流行歌やパントマイムなど、いろいろな要素を自由に取り入れた構成に、先生方の思ひ入れを垣間見ることができ、頭が下がる。娘の場合は、四年生の時にはエイサー、五年生では手旗信号を取り入れた創作ダンスを見せてくれた。
 充実した気持ちで運動場を後にしようとすると、ポツリと雨が再び降り出した。校門を出る頃にはもう土砂降りで、お天道さまが子供たちの呼び声をちゃんと聴き入れ、運動会が終はるのを見届けてから雨を降らせてくれたのだとハッキリと伝はった。心洗はれる運動会だった。
(歌手、兵庫・小野八幡神社権禰宜)

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