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杜に想ふ 世界の良き調和を 山谷えり子

令和5年11月06日付 5面

 鍋物のシーズン、私のふるさと福井のズワイガニの解禁はちゃうどこの紙面の発行日である。散歩をすると寒椿、山茶花の花の色が心を元気にしてくれる。日本はどの季節にも、神仏の恵みのやうないただきものがあってありがたい。
 さて、この秋の臨時国会では、冒頭に総合経済対策・補正予算が審議されていく。物価・エネルギー高騰に対し、国民生活と経済活動の下支へをし、安定的な成長を確かなものにしていかねばならない。私は引き続き、自民党の文化立国調査会長として、文化芸術はわが国の力の源泉であり、全国で再開されたお祭りや、観光地で感じられる熱量に着目し、文化を成長の柱と位置づけてほしいと仲間とともに拡充を求めていったところ、これまでにない驚くほどの賛同が得られ、文部科学部会として重点項目のトップに文化芸術振興を挙げてもらふことができた。
 現在、日本の文化GDPは十・五兆円で、アメリカは七十・四兆円と差は大きい。しかし、高付加価値への質的転換により、世界に評価される日本の文化芸術の力が発揮されれば、日本人の自信と地方の活性化につながると信じてゐる。まさに「明日は今日よりよくなると誰もが感じられる国」づくりの土壌とならう。
 先日、盛山正仁文科大臣と意見交換をしたばかりであるが、具体的には「有形・無形の文化財の保存・修理・活用」「地域の伝統行事の振興」「子供たちの体験・鑑賞・継承の機会づくり」「文化施設の高付加価値機能の複数年度にわたる強化」などである。また、日本の誇るマンガ、アニメ、音楽、舞台芸術、伝統芸能などの世界発信に向けての基盤強化も皆で訴へた。経団連もこの分野への投資に対し重厚長大の国からコンテンツ産業の振興に目を向ける“今がラストチャンスだ”と提言をとりまとめたほどその潜在的成長力を注視してゐる。世界でヒットしてゐるマンガやアニメは、日本の道の心や神道の世界観が反映されてゐるものが多い。私たちはその普遍性にもっと自信と誇りをもって世界発信していき、世界の良き調和をつくる使命ともなるとの気概を持ちたいと思ふ。
 文化芸術がここまで成長戦略と投資の視点でとりあげられたことはかつてなかった。韓国やフランスが国家戦略として文化振興に投資して国家の活力としてゐることなども影響があるだらう。
 先日、私のフェイスブックで全国神楽継承・振興協議会が昨年十月に設立され、神楽の魅力発信やユネスコ無形文化遺産への登録を目指した取組みをおこなってゐることを紹介し、私も神楽伝承国会議員連盟の会長代行として、平和に貢献し、人々に和の力をもたらす神楽の継承振興の後押しをしたいと書いたところ、多くの方々から応援の声をいただいた。文化芸術関係施策の拡充にさらに努めたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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