【新刊紹介】笏の囁き 小笠原定彦編
令和5年11月13日付
6面
県下の芸術家が奉納 鮮やかな笏を一堂に 小笠原定彦氏は本書『笏の囁き』の序文に、笏は神職が生涯に亙って把るものであるとした上で、御自身の神職としての奉職初めの頃の奉仕先神社の宮司の、「笏を握った瞬間から神に奉仕する心境になる」「笏を握ると木の生命力が五感に伝はる」との言を紹介して、神職は笏を大事に取り扱はねばならないことを学んだといふ。爾来六十年余を経て、小笠原氏の笏への思ひはこのすばらしい本として結実したのである。
小笠原氏は神職として笏と向き合っては、それを青森の芸術工芸品の興隆と喧伝に結びつけ、県下の四人の芸術家に笏の作製を依頼したのであった。それは年数を積み、その数は優に千本を越え、作製された笏は全国の著名神社に奉納されてきたのであって、地味ながら地元青森の津軽塗のためにも大いなる功績になったと思はれるのである。
〈非売品だが、希望者に送料込み5000円で頒布。問合せは八甲田神社(電話〇一七―七三八―三〇三三)まで〉
(都立高校非常勤教員・國學院大學兼任講師 中澤伸弘)
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