【新刊紹介】修験道の経・講式・和讚・唱言 宮家準著
令和5年11月13日付
6面
「民俗宗教」に重点 神社護持の助けに 著者は修験道の研究者であると同時に継承者でもある。「宮家」家が代々守る五流尊瀧院は岡山県倉敷市の児島に役行者の五人の高弟が開いたもので、後鳥羽上皇の皇子頼仁親王が中興して以来、親王の男系子孫が継承してきた。だからといって著者の視点は法首として正しい修験道を上から諭すといふものではなく、民衆の生活に根付いた信仰に重点を置く「民俗宗教」にある。
本書はそのやうな第一人者が人々に修験道を理解してもらふために主要な経や儀式の概要を解説したものだ。初心者が修験道の拝礼作法を学ぶ教本的な内容ではなく、勤行の意味を理解することで儀礼の土台となってゐる思想をより理解することに主眼が置かれてゐる。一般向けに平易に説かれてゐるが、長年の研究に裏付けられた解説には修験道の実践者や研究者にとっても参考になる指摘に溢れてゐる。
〈税込3850円、春秋社刊〉
(静岡・秋葉山本宮秋葉神社権宮司 河村忠伸)
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