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杜に想ふ 先人の志を胸に 山谷えり子

令和6年02月05日付 5面

 日ごとに日足が伸び、木の芽もほころんできた。厳しい寒さの中にも春の動きを感じながら、能登半島地震の復旧、復興、被害の最小化にとつとめてゐる。日本海と美しい棚田、五穀豊穣の祭を大切にしてきたこの地域は、北陸育ちの人間のみならず日本人の心の原風景ともいへる大切な土地である。文化庁からは地震による文化財関係の被害の調査報告を受けてゐる。補助の嵩上げなど最善を尽くして生活と文化を守っていく決意である。
 さて、一月二十一日に靖國神社崇敬奉賛会主催による公開シンポジウム『生きるということ「志を未来へ」』の座談会に出させていただいた。基調講演を安倍昭恵さんがされ、安倍晋三元総理との思ひ出とともに志を未来へつなぐ思ひを語ってくださった。昭恵さんは昨年八月より大東亜戦争全戦没者慰霊団体協議会の会長をお務めくださってゐる。慰霊追悼をないがしろにしては国の尊厳と国民の礼節もない。それぞれの持ち場で負ひもつ技に励む国民性は、先人への感謝と尊敬の気持ちがあってこそ豊かに花開いていくのではないだらうか。
 昭恵さんとは昨年夏、台湾を訪問し、台湾の人々による「台湾安倍晋三友の会」の浄財で台湾に留学した日本人留学生たちとお話する機会があった。「安倍総理が世界平和のためにリーダーシップをとられてゐる姿を誇りに思った」「日台のかけ橋となりたい」などの若者の声を聞きながら、昭恵さんは涙ぐまれ、安倍総理のまかれた種が育つやう共に祈り、希望をあたためた。
 私の故郷、福井の幕末の志士、橋本左内は数へ十五歳の時に自らに対する誓ひを「啓発録」に記した。「稚心を去る、気を振るふ、志を立てる、学に励む、交友を選ぶ」の五項目の決意であるが、その覚悟を胸に生きようとする姿を習った時、小学生ながら己の志といふものは、先人たちの志と働きから力をいただくものだといふことを衝撃をもって理解した記憶がある。
 昭恵さんは、ポーランドで「シベリア孤児帰国一〇〇年式典」に出席されたり、ウクライナ避難民施設を訪ねたりと国内外を走り回ってをられる。“どこかで主人に呼ばれてゐるのかしら”との思ひがあるといふが、人は絆の中で志を強め、強められた志により絆もまたさらに広がっていくのだらう。
 先日、昭和十七年の小学校・中学年の国語教科書に目を通してゐると、靖國神社といふ一文に出会った。
 「春は九段のお社に、桜が咲いてをりました。日本一の大鳥居、かねの鳥居がありました。とびらは金の御紋章、御門を通って行きました。かしは手うてばこうこうと、心の底までひびきます……」
 美しいリズムの日本語が大きな時空間へと誘ひ、清らかな愛に包まれるやうで感動した。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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