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論説 梅雨の季節に 自然災害と神社の護持運営

令和6年06月10日付 2面

 今年も梅雨の季節を迎へた。その梅雨前線が東北地方に至る月末となれば、令和六年能登半島地震の発生から半年が経過することとなる。
 各種報道機関が伝へる奥能登地方の様子からは、なかなか復旧・復興が進んでゐない厳しい現状がわかる。地震による死者はこれまで二百四十五人といはれてきたが、先日三十人が災害関連死に認定されたことで、合計二百六十人となってゐる。災害関連死としての認定を求める申請は多く、死者数は今後も増える見込みのやうだ。また断水が続く地区も残り、避難者はいまだ三千人を数へるといふ。
 改めて犠牲者に哀悼の誠を捧げるとともに、遺族・被災者にお見舞ひを申し上げ、被災地の一日も早い復旧・復興を祈念するものである。


 斯界においては神社本庁が広く神社義捐金を募り、先日の五月定例評議員会で災害等対策資金の緊急支出を含め、被災地に五億三千万円を贈呈する旨の報告があった。今後、田中恆清総長が福井・石川・富山・新潟の各県神社庁を訪れ、それぞれ義捐金を贈呈する予定だといふ。
 評議員会における報告に際しては石川県神社庁長が全国の神社関係者からの協力・支援に謝意を表した上で、被災地の現状を紹介。奥能登の珠洲・輪島では多くの神社が全壊もしくは半壊し、神職の自宅なども同様であること、また道路以外の瓦礫撤去が進まず、水道が復旧してゐない地域もあることなどを説明した。その上で、「能登はたいへん祭りが盛んなところ」と述べ、祭りの再興が地域の再生、氏子の心の恢復に繋がるとの確信のもと五年先、十年先を見据ゑて復旧・復興に努めていきたいとの決意を表明。今は現地での宿泊の関係等からボランティアによる支援活動などにも困難がともなふが、可能な状況となったら改めてお願ひしたいと述べて長期的な支援を要請した。
 現地の状況を踏まへてその要望に応じながら、それぞれの段階でできることを考へていきたい。


 先にも触れた神社本庁の五月定例評議員会では能登半島地震だけでなく、負担金の減免措置との関係で東日本大震災の被災地の状況に関しても発言があった。平成二十三年の発災から十三年が経過したが、原発事故の影響を受ける福島県では、いまだ立入りが制限されてゐる地域に三十四社が鎮座。とくに、放射性物質を含む除去土壌などを保管する中間貯蔵施設の区域内に鎮座する八社については、将来的な見通しも立たない状況に置かれてゐる。また避難指示が解除された地域でも、なかなか氏子が戻らない状態が続き苦慮してゐるといふ。
 石川県の庁長から「能登は陸の孤島」との発言があったが、さうした土地柄や、なにより過疎化・高齢化が進む地域であることが復旧・復興の足枷の一つになってゐる。一方、福島県においてはかねて、震災の影響にともなふ過疎化の加速度的な進行が指摘されてきた。顧みれば、平成七年の阪神・淡路大震災においても神戸市内など都市部の神社が比較的早期に再建されたのに対し、復興までに長い歳月を要した神社も存在した。
 原発事故といふ特殊な事情のある福島県はもとより、全国各地で少子高齢化にともなふ過疎化が進行してゐる。過疎地における自然災害からの復興、また自然災害による過疎化の進行といった課題のなかで、被災地における今後の神社の護持運営のあり方について、負担金の減免措置などに限らず斯界全体として対策を講じていくことが求められるのではなからうか。


 近年、梅雨の時期には梅雨前線の停滞や線状降水帯の発生などにより、豪雨被害に見舞はれることが増えた。さうした豪雨をはじめ、地震や台風など各地で毎年のやうに大規模な自然災害が発生し、もはや何時、誰が被災するかもわからないやうな状況にあるといへよう。先月、宮崎県神社庁で災害対策研修会が開催されてゐたが、まづは防災・減災のため、それぞれの立場において日頃から対応を検討しておくことが必要ではないか。
 能登半島地震から半年を迎へるのを前に、また豪雨被害の懸念される梅雨の季節にあたり、防災対策のあり方、さらに被災地における神社の護持運営のあり方について、改めて考へを深めておきたいものである。
令和六年六月十日

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