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論説 「防災の日」 防災対策の情報共有を

令和6年09月16日付 2面

 今年も「防災の日」の九月一日を迎へた。
 「防災の日」は、「政府、地方公共団体等防災関係諸機関をはじめ、広く国民が、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等の災害についての認識を深めるとともに、これに対する備えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資する」ことを趣旨に設定。この日を含む一週間(今年は八月三十日から九月五日まで)が「防災週間」とされてをり、各地の自治体等で防災訓練や広報・啓発行事などがおこなはれてゐる。
 大正十二年のこの日に発生した関東大震災は死者・行方不明者が十万人を超え、わが国の歴史において最悪の自然災害とされる。発災から百年の節目を迎へた昨年は関連の報道・行事なども多く見られ、その被害と自然の脅威を再確認する機会ともなったのではなからうか。それから一年、関東大震災から百一年目の「防災の日」を迎へ、改めて災害についての理解を深め、万全の備へを講じることにより、災害の未然防止と被害の軽減に努めたい。


 関東大震災百年を経て迎へた今年、正月元日には能登半島地震が発生し、その後も大雪や豪雨などにより各地でさまざまな被害が生じた。八月八日には九州・日向灘を震源とするマグニチュード七・一の地震が発生し、気象庁は同日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表。附近での地震活動が続くなか、翌日には神奈川・厚木市で最大震度五弱を観測する地震も発生した。
 さうして迎へた「防災の日」、各地に甚大な被害を齎した台風十号がやうやく東海道沖で熱帯低気圧に変はった。この台風は発生当初から進路予測がなかなか定まらず、また速度が極端に遅かったことから記録的な大雨に見舞はれた地域も多く、人的被害や住家等の被災に加へ、交通機関の乱れや停電などインフラへの影響も目立った。西日本では被害の確認や後片付けなどに追はれ、東日本ではさらなる大雨や土砂災害が懸念されるなど予断を許さない状況が続くなか、否応なく災害の防止について改めて考へさせられる「防災の日」になったといへよう。


 近年は毎年のやうに自然災害が発生してをり、もはやいつどこが被災してもをかしくないやうな状況にある。
 本紙三六九五号(八月二十六日付)には、能登半島地震により甚大な被害に遭った奥能登地方の三支部の支部長による鼎談が掲載されてゐたが、そこでは「初動対応を効率よく進めるための仕組み作りをおこなった方がいい」「災害対策委員会があったけど、なかなか上手く機能しなかったから、備へ方を変へないと」との意見が聞かれた。日頃からの防災対策の取組みを、災害時にいかに活かすことができるのかが課題ともいへよう。
 加へて、「普通に暮らしてゐたとしても、過疎化が進んで氏子さんも減ってしまふ未来だったと思ふ。二、三十年後だと思ってゐたものが今きただけ」「どんなに少なくなってても、残った氏子さんと一緒に頑張りたい」との発言もあった。東日本大震災でも過疎化の加速が指摘されたが、実際に被災した場合、いかにその後の復旧・復興に取り組んでいくのか。地域の実情を踏まへ、将来的な展望なども勘案し、対応を検討しておく必要があるのではなからうか。


 阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などを経験し、また南海トラフ地震や首都直下地震の発生も懸念されるなか、近年は広く防災意識の昂りが感じられる。さうしたなかで、斯界においても自治体等と災害協力協定を締結するなどさまざまな対応が図られ、復興・支援に係る実績も積み重ねてきた。ただ能登半島地震では半島先端部といふ地理的な条件があったことに加へ、人口減少が進む過疎地であること、情報格差や虚偽情報の拡散、災害廃棄物の撤去と公費解体の遅れなど、さまざまな課題が指摘されてゐる。
 普段からの防災対策をはじめ、その後の復旧・復興を考へていく上では、これまでとは異なるさまざまな状況も想定する必要があらう。「想定外」といはれた東日本大震災、とくに原発事故の影響に苦しむ被災地の現状にも思ひを致しつつ、まづは神社本庁・神社庁などの連携のなかで、防災対策、被災後の対応を含めた取組みについて情報共有を進めたいものである。
令和六年九月十六日

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