【新刊紹介】日本史を支えてきた和紙の話 朽見行雄著
令和6年09月23日付
6面
日本文化「和紙の11話」 和紙と神道考へる縁にも 本書は和紙にまつはる日本文化史を十一のエピソードとして一つ一つ丹念に、語りかけるやうに説いてゐる。これら「和紙の十一話」は、和紙の伝来から奈良時代における開花、平安末期に嚴島神社へ奉納された「平家納経」の装飾料紙や鎌倉中期に発展した水墨画、江戸期における和紙の量産が庶民の生活に深く入り込み、和文化の粋を誇るやうに馴染んでいったことなどを説く。
ところで、本書には触れられてゐないが、和紙が神祭りと密接な関係を持つことは、本紙読者には承知のことだらう。神の依代ともされる御幣や注連縄の紙垂などのやうに、あの神聖で真っ白な紙は神具の一部と見做されよう。
さまざまな意味も含め、本書は改めて和紙と神道を考へる一つの縁となるものであらう。
〈税込2090円、草思社刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(秋田・鶴ヶ崎神社宮司、秋田県神道教学研究会順考学会会長 齋藤壽胤)
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