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茅葺き文化を後世に議員連盟の設立総会

令和元年06月17日付 6面

 日本の豊かな茅葺文化を保全・伝承することを目的とする「茅葺き文化伝承議員連盟」が設立されることとなり、五月三十日に衆議院第一議員会館で設立総会が開催された。
 同連盟は、農耕文化とともにあった茅葺き建築が近代化によって激減する一方、茅葺き民家や農村景観を再評価する声があることや、五月に国際茅葺き会議が日本で初開催されたことなどに鑑みて設立。午前九時に始まり、役員として山口俊一衆議院議員を会長、務台俊介衆議院議員を事務局長とすることや、規約内容等が承認された。
 続いて有識者ヒアリングとして、一般社団法人日本茅葺き文化協会代表理事の安藤邦廣氏、長野の茅葺き職人で茅葺き職人連合代表の松澤敬夫氏が茅葺き文化を取り巻く現状を説明した。
 このうち安藤氏は、茅葺き屋根の建物が土器にも描かれるほど古くからあること、とくに神社建築に用ゐられてきたことなどの歴史的変遷や、日本に多様な茅葺き建築があること、世界の茅葺き建築の事例などを紹介。茅葺き文化の保全・継承のための提言として、民家の活用・茅資源と茅場の再生・技能継承と職人育成を挙げ、その方途を提案し、改善に向けた協力を呼び掛けた。
 この中では神宮式年遷宮を取り上げ、二十年に一度造替することの意義を技術伝承の観点から考察。「常に更新していくのが日本の文化」と語った。
 さらに、さうした茅葺き建築の代表例として、天皇の即位後、一代一度斎行される大嘗祭の主要建物である大嘗宮を挙げ、祭典の重要性とともにその意義を解説。今回の大嘗宮が板葺き屋根になることに言及し、「大嘗宮の茅葺き屋根は大切な文化。歴史上初めて板葺きになることはひじょうに残念」との思ひを開陳した。
 こののち「政府よりヒアリング」と題し、文化庁・林野庁・環境省・宮内庁の担当者から、茅葺文化に係る各省庁の取組みの現状について聴いた。このうち宮内庁は、今回の大嘗宮の用材を板葺きで発注したことを述べた上で、板葺きとした主な要因について茅資材の慢性的不足、価格の高騰、職人の高齢化と人数不足を列挙。同連盟の今後の働きによって諸課題が改善されていくやう願ふ旨を述べた。