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振り返るこの一年 平成から令和へ

令和元年12月16日付 6面

(1面より続く)
 【神社】今年も各地で式年祭や社殿造替に伴ふ遷座祭を斎行した神社があった。
 島根県出雲市の出雲大社(千家尊祐宮司)では、本殿の屋根工事を中心とする「平成の大遷宮」が、第二期事業の新庁舎完成を以て完遂。四月六日に「平成の大遷宮完遂奉祝祭並びに新庁舎竣功奉告祭」を斎行した。
 鎮座千三百年を迎へた京都府宮津市の籠神社(海部穀成宮司)では、五月十八日に畏き辺りよりの幣帛を奉って式年大祭を斎行。同神社の縁起を描く能「真名井原」も復曲し、四百三十六年ぶりに演じられた。
 奈良県吉野郡下市町の丹生川上神社下社(皆見元久宮司)では、丹生山山上の本殿の改修や、本殿と拝殿とを結ぶ階の再建など境内整備が完了。六月一日の例祭に先立つ五月三十日、本殿遷座祭遷座の儀を、翌三十一日に天皇陛下よりの幣帛を神前に奉る祭儀を執りおこなった。本殿遷座祭への幣帛供進は令和の御代になってから初めて。
 神奈川県足柄下郡箱根町の箱根神社(小澤修二宮司)では、天皇陛下(現・上皇陛下)の御即位三十年、今上陛下の御大典の慶事を寿ぐとともに鎮座千二百六十年を奉祝するため進めてきた奉祝記念事業を完遂。六月二十七日に「天皇陛下御即位三十年・令和之御大典・御鎮座千二百六十年奉祝記念事業完遂奉祝祭並に祝賀会」を執りおこなった。
 東京・渋谷区の明治神宮(中島精太郎宮司)では、大正九年の鎮座から来年で百年を迎へるにあたり進めてゐた「鎮座百年祭記念事業」のうち、社殿群の銅板屋根葺替へ工事を完了。八月十日に約六十年ぶりとなる本殿遷座祭遷御の儀を、翌十一日には奉幣の儀を斎行し、天皇陛下からの幣帛が神前に奉られた。
 北海道札幌市中央区の北海道神宮(吉田源彦宮司)では明治二年に勅旨により神祇官で「北海道鎮座神祭」が斎行されてより百五十年にあたることから、九月一日に「御鎮斎百五十年式年祭」を斎行した。
 滋賀県長浜市の長濱八幡宮(三家邦明宮司)では十月十五日、例祭並びに講社大祭にあはせ「御鎮座九百五十年祭」を斎行した。
 東京・千代田区の靖國神社(山口建史宮司)では、今年で御創立百五十年を迎へ、十月十七日から二十日までの四日間に亙り、秋季例大祭並びに御創立百五十年記念大祭を斎行した。
 石川県金沢市の尾山神社(加藤治樹宮司)では、本殿の全面改修等の工事がこのほど完了。十月二十七日、天皇陛下よりの幣帛を奉り本殿遷座祭が斎行された。


 五月一日に新帝陛下が御即位遊ばされてから、各地では神社庁なども参画する奉祝委員会をはじめ市町村や神社など、さまざまな団体が祭典・式典や奉祝パレード、各種行事を実施。奉祝気運を盛り上げた。
 【災害】六月十八日午後十時二十二分、山形県沖を震源とするマグニチュード六・七、新潟県村上市で最大震度六強を観測する地震が発生。さらには八月二十七日以降、九州北部で局地的に記録的豪雨が発生したのをはじめ、台風十五号、十九号と相次ぎ台風が上陸し、神社関係でも多数の被害報告が上がってゐる。
 【本庁】五月定例評議員会では任期満了に伴ふ役員改選があり、鷹司尚武統理を再任。新役員も決定し、田中恆清総長と吉川通泰副総長の留任、小野貴嗣・西高辻信良両氏の常務理事新任が決まった。また定例表彰では東京・神田神社の大鳥居信史名誉宮司と富山・雄神神社の藤井秀弘宮司に長老の称号が贈られてゐる。
 神社本庁では新帝陛下が践祚遊ばされた五月一日、また即位礼正殿の儀が執りおこなはれた十月二十二日にそれぞれ統理告辞を発表した。
 神社祭祀審議会では御代替りに係る祭祀・祝詞や通知日の検討などを重ねてきた。関連する祭祀については「天皇陛下御譲位御安泰祈願祭」の斎行(通知・三月十二日)「践祚改元奉告祭執行の件」「御大礼の年にあたり辞別祝詞奏上の件」(通達・五月一日)、「即位礼・大嘗祭当日神社に於て行ふ祭祀並びに臨時大祓の件」(通達・七月十九日)をはじめ各種通達・通知がなされたほか、神社本庁神殿でも祭典を斎行してゐる。
 九月十八日には「大嘗祭当日神社に於て行ふ祭祀」にあたり、全国各神社に供進される神社本庁幣を班つ臨時班幣式が神宮司庁で執りおこなはれた。また十二月五日には「御大典奉祝」を掲げた全国神社関係者大会を東京・渋谷区の明治神宮会館で開催。約千二百人の関係者が集ひ盛大に御即位を奉祝した(詳報次号)。
 神社本庁神道教学研究大会は、「大嘗祭と天皇の祭祀」を主題として九月二日、神社本庁大講堂で開催。大嘗祭を主題に古代や明治などの大嘗祭を考察することを通じ、「敬神尊皇の教学」の観点から御大典の意義を再確認することを目的とした。このほか、神社本庁では御代替りを主題とした各種の行事や啓発活動がおこなはれてゐる。


 本宗奉賛活動強化推進委員会及び過疎地域神社活性化推進委員会では、それぞれ中間報告を取り纏め、今後に向けた議論を展開した。
 神社本庁教誨師に関しては、「矯正の現状と神道教誨」を主題に第七十回神社本庁教誨師研究会を八月二十七・二十八の両日、東京・府中市の大國魂神社(猿渡昌盛宮司)などを会場に開催。七十回の節目を迎へたことから記念式典もおこなはれた。
 【関係諸団体】全国神社総代会では定例代議員会を五月二十一日に神社本庁大講堂で開催。役員改選では三村明夫会長の留任等が決まった。また第五十五回大会は九月四日、石川県金沢市の県立音楽堂で開催。四月四・五の両日には宮城県で、「東日本大震災からの震災復興と地域振興について」を主題に第四十二回神社総代会幹部研修会を宮城県で開催してゐる。
 昨年、創立七十周年を迎へた全国敬神婦人連合会では、記念事業の一環として一月二十日から二十六日までの日程で、ハワイへの研修旅行を実施。また九月十二日には第七十回全国敬神婦人大会を広島市中区の文化交流会館広島文化学園HBGホールで開催した。
 神道青年全国協議会では第七十一回定例総会を四月十八日に神社本庁大講堂で開催し、佐野巌会長以下役員の任期満了にともなひ、昨年十一月の臨時総会で選出されてゐた金田祐季新会長をはじめとする新執行部について、副会長以下の役員人事が承認された。また創立七十周年記念大会は、彬子女王殿下の台臨を仰ぎ、四月十七日に東京・港区の明治記念館で開催。このほか八月三十日、新帝陛下の御即位にともなふ大嘗祭が十一月十四日から十五日にかけて斎行されるのを前に、国民国土の清浄を期す臨時大祓「天下大祓」を全国各地で執りおこなった。
 全国神社保育団体連合会では五月十四日に第六十八回総会を都内のホテルで開催。また同日、園長・設置者研修会も実施してゐる。
 全国教育関係神職協議会では六月二十九日に現職教員等研修会を、八月八・九の両日には第六十回全国大会・中央研修会を、それぞれ東京・渋谷区の國學院大學で開催した。
 全国神社スカウト協議会では七月七日に神社本庁で代議員会を開催。任期満了にともなふ役員選任があり、大野清徳会長の留任などが決まった。
 全国氏子青年協議会では第五十七回定期大会を山形県天童市の天童ホテルで七月六日に開催。大会にあはせておこなはれた定期総会では、任期満了にともなふ役員改選があり、鈴木登代秀氏(東京・蒲田氏子青年会)の新会長就任などが承認された。
 全国神職保護司会は、第三十回記念総会並びに令和元年度総会を六月六日に東京・渋谷区の東郷記念館で開催した。
 一般財団法人神道文化会では評議員会及び表彰式を五月二十四日、東京・千代田区の東京大神宮(松山文彦宮司)で開催。また公開講演会「皇位継承儀礼を考える」を六月二十二日に東京・渋谷区の國學院大學でおこなった。

【時局】


 【皇室関連】御代替りに先立ち、政府では二月二十四日に「天皇陛下御在位三十年記念式典」を東京・千代田区の国立劇場で挙行。天皇陛下御即位三十年奉祝委員会と天皇陛下御即位三十年奉祝国会議員連盟、公益財団法人日本文化興隆財団でも四月十日、同じく国立劇場で「天皇陛下御即位三十年奉祝感謝の集い」を実施した。
 また十一月九日には、天皇陛下御即位奉祝国会議員連盟や天皇陛下御即位奉祝委員会、日本文化興隆財団が皇居前広場などを会場に「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」を開催し、延べ約七万人が参集。このほか全国各地でも、神社関係者の参画のもと御在位三十年や新帝陛下御即位を奉祝する各種行事等がおこなはれた。
 神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議国会議員懇談会では、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」成立にあたり「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について検討を求める附帯決議がなされたことなどを踏まへ、皇室制度に係る勉強会を開催した。
 菅義偉内閣官房長官は九月二十七日の定例会見で、大嘗宮の主要三殿の屋根材について、板葺きから茅葺きへの変更は困難との見解を示した。主要三殿の屋根については昨年十二月、大礼委員会が板葺きにするとの方針を提示。その後、識者らから伝統に即して茅葺きとすべき旨の意見があり、五月に設立された「茅葺き文化伝承議員連盟」や有志らで組織する「伝統に即した大嘗宮造営を願ふ国民の会」などが茅葺きとすべきことを訴へてゐた。
 また明治以降の大嘗祭で悠紀地方・主基地方に選ばれた各県の関係者が一堂に会する「ゆき・すきサミット」が九月二十一日、同サミット実行委員会の主催で東京・渋谷区の明治神宮会館を会場に開催され、神社本庁と本社が後援、明治神宮が特別協力した。
 神社新報社が設置した「時の流れ研究会」でも会合を重ね、御代替りに係る課題等について意見を交換した。
 【新元号】改元については、「皇室典範特例法」成立に際して「改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにする」ことを求める附帯決議が採択されたこともあり、その時期等についてメディア各社の報道が過熱。斯界では御即位後の公表等を要望してきたが、安倍晋三内閣総理大臣は一月四日の神宮参拝後の年頭会見で四月一日に発表することを表明した。
 その四月一日、政府は五月一日からの新しい元号を「令和」とすることを発表。同日、元号を改める政令が公布された。安倍総理は会見で、「新元号については、閣議決定をおこなった後に、宮内庁を通じて今上陛下及び皇太子殿下にお伝へした」との経緯を説明した。
 【憲法改正】今年も五月三日の憲法記念日を中心に、憲法改正を求める各種集会が開かれた。このうち神社本庁も参画する「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は五月三日、東京・千代田区の砂防会館別館で公開憲法フォーラムを開催。また神政連では大阪・愛知・石川で「公開憲法フォーラム」を開催し、世論喚起に努めた。
 【参議院選挙】第二十五回参議院議員通常選挙の投開票が七月二十一日にあり、比例代表選出議員選挙では神政連が推薦する有村治子氏が四期目の当選を決めた。また選挙区選出議員選挙では、中央本部や地方本部が推薦した三十八人が当選した。
 【世界遺産】文化庁は七月六日、日本が推薦してゐた大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」の世界遺産一覧表記載が決定したことを発表。宮内庁では「皇室御祖先のお墓としてその『静安と尊厳』が損なわれないことを前提に、今後とも陵墓を含む世界文化遺産の保全に向けて必要な協力を行なってまいる所存です」との坂井孝行書陵部長の談話を発表した。

【帰幽】


 今年も永年に亙り斯界を支へてこられた多くの関係者が身罷られた。


 大藤安教白山神社宮司(特級)三月二日帰幽、享年九十二。
 金倉文雄八坂神社宮司・大麻比古神社名誉宮司(特級)三月七日帰幽、享年九十。
 厚見益樹安江八幡宮名誉宮司・諸江白山神社宮司(特級)三月七日帰幽、享年八十九。
 真弓常忠住吉大社名誉宮司(特級)四月三日帰幽、享年九十六。
 髙司道典愛宕神社宮司(特級)四月二十一日帰幽。享年八十二。
 足立正之靈山神社宮司(特級)五月十日帰幽、享年七十三。
 湯澤貞靖國神社元宮司、七月二十二日帰幽、享年八十九。
 宇都宮精秀南宮大社宮司(特級)十月六日帰幽、享年七十一。
 川村昭二株式会社日本建築工藝設計事務所相談役、十一月二十一日帰幽、享年八十五。

(以下写真)
靖國神社での御創立百五十年記念大祭
明治神宮での本殿遷座祭遷御の儀
「ゆき・すきサミット」
「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」に御臨席された天皇・皇后両陛下㊤、聖寿の万歳をおこなふ登壇者(天皇陛下御即位奉祝委員会)