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振り返る令和二年

令和2年12月21日付 6面

(1面より続く)

斯界


 【本庁】「立皇嗣の礼」が執りおこなはれるのを前に、神社本庁では「『立皇嗣の礼当日神社に於て行ふ祭祀』執行の件」を三月三日付で各神社庁長宛、田中恆清総長名で通達し、祭祀の執行を要請した。
 この通達に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となった「立皇嗣の礼」の挙行日が十一月八日に決定されたことを受けて改めて十月九日に通知。立皇嗣の礼当日またはそれ以降のなるべく近い日に立皇嗣の礼当日の祭祀を執りおこなふことを求めた。立皇嗣の礼当日は国旗掲揚を勧奨するやう、あはせて依頼してゐる。
 神社祭祀審議会では、二月二十日に第二十一回会合を開き、「立皇嗣の礼」に係る神社の祭祀などについて審議。また皇室典範特例法に定められた上皇、上皇后、皇嗣に関し、「天皇・三后・皇太子又は皇太孫御参拝の場合の奉告祭について」(昭和四十六年九月八日通達)並びに、「神職の祭祀服装に関する規程」第二条二項の運用についても話し合ってゐる。
 緊急事態宣言発出以降、神社本庁では各種対応にも追はれた。
 三月におこなはれる予定となってゐた全国教化会議は延期に。十二月に改めて今年度の教化会議としておこなふ予定だったが、新型感染症の再拡大に伴ひ開催方法を変更して実施することとなってゐる。
 神宮大麻暦頒布終了祭にあはせての神宮大麻暦頒布春季推進会議、また始祭にあはせての秋季推進会議はそれぞれ中止となった。
 例年、春・秋の二回、神社本庁で執りおこなはれてゐる敬神功労章授与式も中止となり、受章者には各神社庁を通じて功績状及び記念品を伝達。また神社本庁主催の各種研修においても中止や開催方法の変更などの対応が図られてゐる。
 例年開催してゐる神道教学研究大会については今年の開催を中止。代替措置として「疫病と祭祀」を主題に、神職専用サイトでの動画配信による神道教学講演会を実施した。
 今春の評議員会については、書面表決による常任委員会として実施することが役員会で決定され、六月十五日に各常任委員宛に資料を送付して、二十五日までに表決書返送を求める形式でおこなはれた。書面表決では「負担金賦課徴収規程の特例運用に関する件」「令和二年度一般会計歳入歳出予算案」「一般会計資金年度内一時繰替の件」「令和二年度御代替記念事業特別会計歳入歳出予算案」の四議案がいづれも全会一致で可決されてゐる。
 神社本庁が各神社庁に割り当てる負担金に関する制度等について、統理の諮問を受けて開催されることとなった負担金賦課制度等財政調査委員会は、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で八月七日に第一回・十九日に第二回会合が、神社本庁で九月四日に第三回の会合が開かれ、審議・検討がおこなはれた。新型感染症に伴ふ経済活動への深刻な影響が神社界にも及んでゐることに鑑みて開催されたもので、令和二年度の負担金を三割減免とするとともに、三年間の負担金減免期間を設けることなどを盛り込んだ答申を取り纏めてゐる。
 令和二年十月定例評議員会は十月二十三日、同ホテルを会場とする異例の形でおこなはれ、例年のやうな傍聴席は設けられず、全国各地から選出されてゐる評議員のみ約百三十人が出席。令和元年度決算を認定するとともに、令和二年度補正予算案を可決した。
 また、会議に先立ち五月に開催できなかった表彰式に代はり長老敬称授与並びに鳩杖贈呈式を実施。北海道・北海道神宮の吉田源彦宮司と福井・太田神社の宮川脩宮司に鳩杖が贈られた。
 平成二十八年に設置され、令和元年には役員会への中間報告をおこなってゐた本宗奉賛活動強化推進委員会及び過疎地域神社活性化推進委員会は、令和四年六月を期限として改めて設置。本宗奉賛活動強化推進委員会は三月十七日、過疎地域神社活性化推進委員会は八月二十七日に第一回会合を神社本庁で開催した。過疎地域活性化推進委員会ではこののち、十一月までに四回の会合を重ねてゐる。
 今年の教育勅語渙発百三十年にあたっては、七月三日付で「教育勅語渙発百三十周年記念祭並びに記念事業の実施について」を各都道府県神社庁に通知。記念祭の斎行をはじめ、各地域、各神社の特色を活かした記念事業及び行事を計画・推進するやう求めた。
 【関係団体】神社関係の各団体でも新型感染症拡大の影響を受けて、各種行事の中止や変更などが相次いだ。
 全国神社総代会(会長=三村明夫日本商工会議所会頭)では、五月十九日に予定してゐた定例代議員会を中止した。これに伴ひ同会規約に基づき権限の一部を役員会に委任することとし、協議予定だった事項のうち当面の運営に必要な事業計画や予算案など三項目について、書面会議による役員会を開催。結果を六月十日付で代議員に送付してゐる。また九月九日に広島市で開催予定だった第五十六回全国神社総代会大会については、来年に延期されることとなった。
 全国敬神婦人連合会(鷹司久美子会長)では九月に北海道でおこなふ予定だった第七十一回全国敬神婦人大会を延期に。大会開催時に予定してゐた役員会・常任委員会は十月に書面審議でおこなってをり、大会については来年九月に改めて北海道で実施する方針となってゐる。
 神道青年全国協議会(金田祐季会長)では八月二十七日に、例年四月におこなってゐる定例総会をウェブ会議システム「ズーム」を使用した常任委員会として開催。令和二年度の活動方針や事業計画案などを審議した。また十一月二十五日には、インターネットを活用した臨時総会を神社本庁大講堂で開催し、来年四月からの次期会長に小林慶直氏(新潟・白山神社宮司)、監事に西高辻信宏(福岡・太宰府天満宮宮司)・芦原大記(北海道・旭川神社禰宜)・猪熊兼高(香川・白鳥神社禰宜)の各氏が選ばれた。
 全国教育関係神職協議会(佐藤英尊会長)では、八月に開催予定だった全国大会の中止を決定。大会決議事項を役員会に委任して、書面での審議結果を八月三十一日付で全国の単位会に送付した。
 全国神社スカウト協議会(大野清徳会長)では、七月上旬に開催予定だった代議員会の中止を決定し、書面で加盟団による審議を実施。表決結果を九月一日付で役員をはじめ監事、加盟団団委員長に送付した。令和三年に開催が予定されてゐた第十三回全国大会は、同五年を目処に延期する方針を決定してゐる。
 全国氏子青年協議会(鈴木登代秀会長)では福岡で開催を予定してゐた第五十八回定期大会を中止に。定期総会は書面決議にて実施し、審議結果を全国の単位会に送付した。来年の第五十九回定期大会は開催の可否も含め再検討することとし、総会の会場についても検討を重ねてゐる。また例年おこなってゐる神宮新穀献米奉納参拝は、献米は継続するものの集団参拝は募集せず、役員が代表して参拝し奉納した。このほか四月に東京・靖國神社(山口建史宮司)で開催を予定してゐた「第十一回全国鎮守の森こども相撲大会」は延期となってゐる。

帰幽


 今年も永年に亙り斯界を支へてこられた多くの関係者が身罷られた。

 岩切重信今山八幡宮名誉宮司(特級)二月六日帰幽・享年八十二。
 草場昭司神社本庁長老・佐嘉神社宮司(特級)二月十一日帰幽、享年八十九。
 伴五十嗣郎皇學館大学元学長・名誉教授、二月二十七日帰幽、享年七十六。
 佐古一洌松尾大社名誉宮司・学校法人皇學館前理事長(特級)四月二十三日帰幽、享年七十八。
 藤原隆麿神社本庁理事・神道政治連盟総務会長・岩手県神社庁長・盛岡八幡宮宮司(特級)五月十七日帰幽、享年六十六。
 櫻井正弥速谷神社名誉宮司・臼山八幡神社宮司(特級)六月二十一日帰幽、享年八十六。
 磯貝洋一志波彦神社鹽竈神社元宮司・神社本庁元理事、八月二十一日帰幽、享年八十八。
 面山千岳秋田県護国神社名誉宮司・県神社庁顧問(特級)十月十五日帰幽、享年九十。

時局


 【皇室関連】超党派の国会議員で組織する日本会議国会議員懇談会は三月六日、皇位の安定的継承を主題とする「皇室制度プロジェクト」の勉強会を東京・千代田区の衆議院第一議員会館で開催。十一月十二日には、同会の有志議員が菅義偉内閣総理大臣に対し、男系による皇位の安定的継承を確保するための申入れをおこなった。
 神社新報社が設置した「時の流れ研究会」では、「皇位の安定的な継承を確保するための諸課題」についての見解を四月十九日付で発表。元皇族の男系男子孫の適任者が皇族の身分を取得できるやうにすることや、皇族間の養子を容認して現宮家の将来的な存続を可能にすることなどを提言してゐる。
 【憲法】神道政治連盟は第十八回時局対策連絡会議を二月二十四から二十八日にかけて開催。結成五十年の節目にこれまでの取組みを回顧するとともに、改憲をはじめとする斯界を取り巻く諸課題について知見を深めた。
 なほ最終日には、政府が中国・習近平国家主席を国賓として招聘する姿勢を取ってゐたことに鑑み、国内の強い懸念を政府に伝達することや、中国による皇室の外交利用に繫がらないやう政府に働きかけることなどを盛り込んだ要望書を、打田文博会長が神政連国会議員懇談会会長代行の中曽根弘文参議院議員らに手交してゐる。
 神社本庁が参画する「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会(通称・民間憲法臨調)と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は、例年五月三日の憲法記念日に開催してゐる「憲法フォーラム」の集会を新型コロナウイルス感染症の拡大に鑑みて中止に。これに代はり、動画共有サイト「ユーチューブ」等でライブ中継「YouTube憲法フォーラム」の配信を実施した。このフォーラムには安倍晋三自由民主党総裁(当時)がビデオメッセージを寄せ、緊急事態条項の新設や憲法九条への自衛隊明記の必要性などを訴へた。
 「国民の会」ではさらに、「国会に憲法改正論議を求める! 国民集会」を十二月二日に東京・千代田区の憲政記念館で開催。各都道府県単位の「県民の会」では、改憲に向けた「国民投票連絡会議」の設立や署名活動などに取り組んでゐる。
 また、「新しい憲法をつくる国民会議」(自主憲法制定国民会議)は例年開催してゐる国民大会を新型感染症の拡大防止の観点から中止に。五月三日付で清原淳平会長の講話を発表した。
 日本会議議員懇の「憲法改正プロジェクトチーム」は十一月十七日、緊急事態条項の新設に関する勉強会を東京・千代田区の衆議院第二議員会館で開催した。

災害


 【新型感染症】中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症の日本国内での拡大を受け、政府は一月三十日、安倍晋三内閣総理大臣(当時)を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」の設置について閣議決定し、同日に第一回会合を開催。二月二十五日の会合で「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定した。
 三月十三日には新型感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に加へる改正案が国会で可決。成立した改正特措法に基づく対策本部が二十六日に設置され、二十八日に基本的対処方針が決定した。都市部での急速な感染拡大を受け政府は四月七日、改正特措法に基づく緊急事態宣言を発出。実施すべき期間を五月六日までの一カ月間、実施すべき区域を埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪・兵庫・福岡の七都府県とした。
 四月十六日、対象地域を全都道府県に拡大することを決定し、さらに七都府県に北海道・茨城・石川・岐阜・愛知・京都の六道府県を加へた十三都道府県について、とくに重点的に感染拡大の防止に向けた取組みを進める必要がある「特定警戒都道府県」と指定。五月四日には期間を五月三十一日まで延長することを決定した。
 五月二十五日には埼玉・千葉・東京・神奈川・北海道の五都道県の緊急事態宣言が解除され、約一カ月半ぶりに全国で解除されることとなった。以降は感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着などを前提とし、一定の移行期間を設けて外出の自粛や施設の使用制限の要請等を緩和。段階的に社会経済の活動範囲を広げていくこととした。
 神社本庁では二月二十日、「新型コロナウイルス感染症の発生に伴ふ神社の対応について」を田中恆清総長名で各神社庁長宛に通知し、感染症対応に万全を期すやう要請。その後も政府の対応に合はせて複層的に通知等をおこなひ、注意を喚起した。
 三月四日には「新型コロナウイルス感染症流行鎮静祈願祭執行の件」を通知。全国神社において鎮静祈願祭を斎行するとともに、状況改善までの間、日供祭で辞別祝詞を奏上することを要請し、祝詞例文を示してゐる。
 また、三月二十五日に小池百合子東京都知事が在宅勤務や外出自粛等の要請をおこなったことを受け、二十七日及び二十八日の職員の自宅勤務などを決定。その後の継続要請や緊急事態宣言発出に伴ひ臨時庁務態勢を延長し、五月二十五日の緊急事態宣言解除まで続いた。
 十月二日には「神社における新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインについて」を通知した。前日には本庁職員が内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室を訪問し、斯界での感染症対策等について説明。また十六日に内閣府で開催された「イベント開催のあり方等に関する検討会(第三回)」に神社本庁と埼玉県神社庁の職員が出席し、斯界の取組みなどを説明した。このほか、埼玉県神社庁と大阪府神社庁が中心となって企画した「変わらない祈りのために」キャンペーンに協力してゐる。
 このほか、ガイドライン策定やアンケート調査などを独自におこなった神社庁・指定団体等もあった。
 神社本庁も参画する公益財団法人日本宗教連盟は、「このたびの新型コロナウイルスの社会的影響と、政府の支援策について」との意見を纏め、六月二十三日付で発表。減収した事業所に政府が最大二百万円を給付する持続化給付金の対象から宗教法人が除外されたことへの危機感などを示した。
 神職養成機関のうち、國學院大學・皇學館大学では夏の神職養成講習会が中止に。卒業式・入学式でも式典や祝賀会を中止としたり、奉告祭のみ斎行したりするなどの変更を余儀なくされたほか、新年度からは遠隔授業等の対応に迫られた。
 なほ、今夏の開催を予定してゐた東京オリンピック・パラリンピックは、新型感染症の影響で一年程度延期することが三月二十四日に決定。その後、オリンピックの開会式を来年七月二十三日に、パラリンピックの開会式を八月二十四日に開催することが決まった。
 【風水害】七月三日から七月三十一日にかけて日本付近に停滞した前線の影響で、各地では大雨となり、人的被害や物的被害が発生した。気象庁により「令和二年七月豪雨」と名付けられたこの豪雨では熊本県南部を流れる球磨川が氾濫し、広範囲で冠水被害や土砂災害が発生。九州をはじめ中部・東北などで神社関係の被害報告が上がってゐる。新型感染症の影響でボランティアの確保がむつかしく復興支援が思ふやうに進まないといふ話も聞かれた。
 また九月六日から七日にかけて、九州のほぼ全域を暴風域に巻き込んで北上した大型でひじょうに強い台風十号により、九州の一部では記録的な暴風に襲はれ、神社関係の建造物などにも大きな被害を齎した。

(以下写真)
評議員会に先立つ長老敬称授与並びに鳩杖贈呈式
憲法フォーラムはライブ中継で
本庁が「ピクトグラム」によるポスター作成支援を