文字サイズ 大小

論説 新春を迎へて 皇室と改憲の重大な年

令和4年01月17日付 2面

 令和四年の年明けは、太平洋側では比較的好天に恵まれた一方、北海道や日本海側など年末からの寒波や大雪に見舞はれた地域もあったが、新型コロナウイルスの感染者数が減少してゐたこともあり、久しぶりに帰郷して家族・親族との再会を喜び合ふ人々が増え、初詣も賑はひが戻ってきたやうだ。しかし新年を迎へて間もなく、これまで欧米を中心に感染が拡大してゐた新たな変異株「オミクロン株」の感染確認がわが国でも相次ぎ、その対応を迫られることとなってゐる。正しい情報の把握に努めるとともに、これまでの教訓を活かして過度の心配や混乱を招くやうな事態は避けなければならない。
 新春恒例の宮中一般参賀は昨年に続いて中止となったが、天皇陛下にはビデオメッセージの形で、「人と人とのつながりを一層大切にしながら、痛みを分かち合い、支え合って、この困難な状況を乗り越えていくことを心から願っています」と述べられた。我々はこの「おことば」を体し、勇気を持ってコロナ禍を克服していきたい。

 皇室において、皇位の安定的継承は最大の重要事項である。それをお支へする意味で、われわれ国民にとっても今年は極めて重要な年となる。
 国会の附帯決議に基づき、昨年三月から「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について検討してきた政府の有識者会議が、年末に報告書を提出した。政府は検討の結果を国会に報告し、その後は政府・国会の協力によって対応方針が練られ、国民的議論にも付されることになると思はれる。報告書は、「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」との認識のもと、当面は皇族数の確保を図ることが喫緊の課題だとして三つの方策を提示した。
 それは①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する、②養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、①②で十分でないときには、③皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする――の三案である。
 今回、過去二回の有識者会議等では取り上げられることのなかった②と③が明記されたことは、万世一系の皇統を護持する上で洵に喜ぶべきことといへる。この両案は、本社の設置した「時の流れ研究会」が令和二年四月に発表した見解とも考へ方を同じくするもので、今後は具体的な立法化に向けた真摯な努力が要請されよう。

 また今年は、夏に議員の半数が改選となる参議院議員選挙を控へてをり、重要な政治決戦の年といへる。それは皇室の課題解決とともに、念願の憲法改正の実現を左右するものとなるからだ。昨年の衆院選で与党は三分の二以上の議席を確保したが、参院選でも勝利すれば、その後の三年間は選挙がなく、政権は長期安定化が見込まれて改憲に有利な情勢となる。
 岸田文雄首相はこれまで何度も憲法改正の実現を目指すことを明言してをり、自由民主党でも憲法改正の推進本部を実現本部に改め、四十七都道府県にも実現本部の設置を決めてゐる。野党も日本維新の会が改憲に積極的で、国民民主党も乗り気になってをり、参院選の結果、改憲勢力が三分の二以上を占めれば、いよいよその実現が可能とならう。
 神道政治連盟はすでに山谷えり子議員を比例代表区の推薦候補に指名してゐる。皇室と憲法、「夫婦別姓」、「LGBT」、子供と家庭のあり方など、斯界にとって重要な諸問題への対処を期待し、山谷氏を強力に支援していきたい。

 昨年の神社本庁設立七十五周年を経て迎へた今年は、神宮大麻全国頒布百五十周年の大きな節目の年にあたってゐる。明治維新により「神社の儀は国家の宗祀」と位置付けられ、明治五年には明治天皇の大御心を体した公的な「大御璽」として神宮大麻の全国頒布が始められた。その後、頒布組織等の変遷を経て、現在は神宮を本宗と仰ぐ神社本庁のもと、全国津々浦々の氏神神社を通じて神宮大麻の頒布が続けられてゐることの意義を再確認したい。
 令和四年の年頭にあたり、皇室を戴くわが国の悠久の歴史、さらに、国家の根幹たる憲法を考へる上で重要な一年となることをしっかりと認識するとともに、国の修理固成に努めるべき神社関係者として、その尽力に向けた決意を新たにしたいものである。
令和四年一月十七日