【新刊紹介】ものと人間の文化史193 人形 是澤博昭著
令和8年08月31日付
5面
時代背景などにも目配り 先駆的な人形の文化史 本書はわが国の人形の歴史を学術的に読み解く劃期的な著書である。
今日まで特定の領野や時代、習慣、あるいは物の変化を中心とした人形研究は一定数存在したが、社会的背景や思想史的動向にまで目配りをした、いはゆる「文化史的」人形論は珍しい。ともすると趣味や嗜好が先行し、感傷的な物語構造にも落とし込まれがちなのが斯様な文化論である。その意味において著者の知見の客観性と信頼性は、人形文化の芸術的評価の隆盛にナショナリズムとの結合を想定する態度においても十分に担保されてゐよう。
物事の価値はそのもの自体「ではなく」、常にそれが置かれた状況により決定される。ならば、我々は常に何かを捨てることでしか前へと進めないのか。
本書が先駆的な「人形の文化史」であると同時に、また優れて、そこに生きた「人間の文化史」足り得てゐるのは、まさしくさうした移り気な人の像(姿)を捉へるものでもあるからであらう。
〈税込4620円、法政大学出版局刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學講師・平井倫行)
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