論説
今年の初詣に際し 神々の加護のもと平穏な年に
令和8年01月19日付
2面
令和八年の新春を迎へ、全国各地の神社は初詣の参拝者で大いに賑はひを見せた。
今年の正月三が日は日本海側を中心に降雪があり、とくに二日には内陸部を含め各地で積雪に見舞はれた。東京都内でも三が日としては四十八年ぶりとなる積雪を記録し、路面凍結にともなふ車のスリップ事故が多発。山陽自動車道では、上り線の広島県から山口県にかけて雪の影響により大規模な渋滞が生じた。初詣との関はりでも、埼玉・三峰神社に繋がる県道で立ち往生やスリップ事故が発生。交通規制により参拝者が足止めを余儀なくされ、神社では宿坊の一部を開放するとともに食事を提供してゐる。
かうした悪天候が少なからず初詣の出足を鈍らせた面もあったやうだが、そのほか大きな事件・事故の報告はなく、今年は比較的穏やかな年明けだったといへさうだ。
○ 今号掲載の記事によれば、今年の三が日は前述の通りの降雪や厳しい寒さに見舞はれた地域もあったものの、おほむね好天に恵まれて参拝者や祈祷件数が増加したとの報告が聞かれてゐる。令和以降の初詣は長く疫禍に悩まされてきたが、もちろん収束後の現在は直接的な影響は見られない。ただ疫禍を契機に見直した初詣対応が現在も継続し、疫禍後の新たな形として定着してゐるやうな事例も散見される。
初詣をめぐっては、整然と列を作っての参拝、三が日に限らず参拝する分散化、二拝二拍手一拝といふ作法の滲透、大晦日から元日にかけての二年参りの減少などといった変化が次第に常態化。また近年は、観光地や都市部で増加する外国人参拝者への対応、キャッシュレス決済導入の可否、硬貨入金手数料の値上がりなどの課題も指摘されてきた。本紙では今後、さうした変化や課題を含めた今年の正月三が日の状況などについて、各地の通信員へのアンケートを通じて調査し、詳細な報告記事を掲載する予定だといふ。
神社における初詣対応をはじめ、参拝者のさまざまな傾向の変化やそれにともなふ課題については、信仰のあり方との兼ね合ひなどの観点からも引き続き関心を持って見守りたい。
○ 今年の年末年始は、曜日の並びから長期休暇となった向きも多かったやうだ。その休み明け直後の一月六日には島根県東部を震源とする地震が発生し、鳥取・島根の両県で震度五強を観測。神社でも灯籠が倒壊するなどの被害があった。新年早々の地震により、二年前の元日に発生した令和六年能登半島地震を想起した人々も多かったのではなからうか。
その能登では、震災から二年を経てもなほ一万七千人余りが仮設住宅で暮らすなど、いまだ厳しい状況が続いてゐる。さうしたなかでも、やうやく復興の兆しが見えてきてゐるとの報告も聞かれ、今年はいよいよ各地で社殿復興に向けた動きが出てくることになりさうだといふ。
昨年の阪神・淡路大震災三十年を経て迎へた今年は、東日本大震災から十五年、また熊本地震から十年の節目の年にもあたってゐる。各地で自然災害が相次いでゐる昨今、まづ以て被災地に一日も早く日常が戻ることを切に願ふものである。加へて神社に人々が集まる初詣に際し、今年の雪害や地震なども踏まへつつ、いつどこが被災地となってもをかしくないといふ覚悟のもと、日頃から自然災害への対応を検討することの大切さを改めて指摘しておきたい。
○ 宮内庁は一月一日、新年に当たっての天皇陛下の御感想を発表した。
陛下には、「昨年も、地震や豪雨、林野火災、大雪などによる災害が各地で発生したほか、物価の上昇などにより、苦労された方も多かったことと思います」と御述懐。さうしたなかで困難を抱へる人々のことを御案じになられた上で、「今年も、人々がお互いを思いやり、支え合いながら、困難な状況を乗り越えていくことができるよう願っています」と述べられてゐる。
新春にあたり、神前で真摯に祈りを捧げる多くの老若男女の姿が見られた。その一方で、さまざまな困難を抱へた状況のなかで初詣が叶はなかったやうな人々もゐたのではなからうか。神々の恩頼を蒙りながら、この一年がそれぞれにとって平穏なものとなるやう心より祈念するものである。
令和八年一月十九日
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