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論説 立皇嗣の礼を終へて 今後の皇位継承に向けて

令和2年11月30日付 2面

 秋天の十一月八日、秋篠宮文仁親王殿下が皇嗣となられたことを天皇陛下が広く内外に宣明される「立皇嗣の礼」が執りおこなはれた。
 憲法上の国事行為である「立皇嗣宣明の儀」が皇居で厳かに挙行されたのに続いて「皇嗣に壺切御剣親授」があり、皇太子の守り刀として代々伝へられてきた「壺切御剣」が天皇陛下から秋篠宮皇嗣殿下に授けられた。また「立皇嗣宣明の儀」に先立ち、天皇陛下には宮中三殿における「賢所皇霊殿神殿に親告の儀」に出御され、「壺切御剣親授」ののちには、秋篠宮皇嗣殿下が「賢所皇霊殿神殿に謁するの儀」に臨まれてゐる。
 初めてとなる今回の「立皇嗣の礼」は「立太子の礼」に倣ったものとされ、これにより秋篠宮皇嗣殿下は皇位継承順位第一位の皇嗣として、皇太子と同等のお立場で天皇陛下を支へられる大切なお務めを果たしていかれることとなったのである。
 コロナ禍によって当初の四月予定が延期となり、儀式も一部取止めや規模縮小を余儀なくされたが、この困難な時期に無事挙行されたことは何よりも喜ばしいことであり、国民挙って心からお祝ひ申し上げたい。

 立皇嗣の礼を終へられた秋篠宮皇嗣殿下には、これから多くの御活躍に期待が寄せられてゐる。まづ第一に、天皇陛下が皇太子時代に務めてをられた御公務や御活動をほぼそのまま引き継がれるとともに、新嘗祭をはじめとする宮中祭祀、天皇の国事行為の代行、御名代としての諸外国への御訪問などを含め、数々の大切なお務めを果たされることとならう。それらに加へて、これまでの御公務の多くも継続してお務めになられ、さらには第二位の皇位継承者となられた悠仁親王殿下の御教育も重要になってくる。
 目下のところ皇室行事は新型コロナウイルス感染症の影響により、ほとんどが中止となるやうな状況にあるとはいへ、これからは秋篠宮皇嗣殿下が多くの役割を担はれることとなる。今後、御公務の負担軽減や分担などを含め、必要に応じて対応が検討されなければならない面もあるのではなからうか。

 立皇嗣の礼をもって令和の御代替りに伴ふ一連の行事は終了したが、政府と国民にとっては、まだ皇室のためになさねばならない重要な課題が残されてゐる。それは平成二十九年の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の制定時になされた国会の「附帯決議」への対応である。政府は、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」検討し、その結果を速やかに国会に報告することが求められてゐるのである。
 安倍晋三内閣を引き継いだ菅義偉内閣が今後どのやうな形で検討をおこなひ、いつ頃国会に報告するのかははっきりしてゐないが、有識者からの非公式な意見聴取はすでに終はってゐるとの報道もある。
 かうした事情を背景に、日本会議国会議員懇談会(会長=古屋圭司衆議院議員)は、十一月十日に加藤勝信内閣官房長官に、また十二日には菅首相に対して、男系による皇位の安定的継承を確保するための申し入れをおこなってゐる。
 その主旨は、現在の皇室において次世代に属する皇族男子が悠仁親王殿下のみといふ極めて不安定な状況にあるなか、男系による安定的な皇位の継承を確保するためには、次世代に備へた対応が急務であり、戦後、皇籍を離脱した旧宮家の男系男子孫のなかから、悠仁親王殿下をお支へすることのできる年代の方々を皇族として迎へ入れ、安定的な皇位継承を確保する、といふものである。

 「附帯決議」への取組みについては神社新報社が設置した「時の流れ研究会」においても検討が進められ、すでに四月十九日に、その具体的方策を含めた提言と見解とが発表されてゐる(本紙四月二十七日付)が、今回の議員懇の申し入れの主旨とも考へ方を同じくするものである。
 皇室の憲法ともいふべき皇室典範は、第一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めてゐる。今後、この基本原則に基づいた検討がなされるやう、国会議員などととも連携して政府に要望するとともに、国民への啓発に努めていかねばならない。
令和二年十一月三十日