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論説 神政連結成五十五周年 先人の思ひ顧み一致団結を

令和7年06月23日付 2面

 神道政治連盟・神政連国会議員懇談会の結成五十五周年記念式典並びに合同祝賀会が、六月九日に都内のホテルで開催された。その内容は今号掲載の通りだが、合同祝賀会では、大阪・関西万博にあはせて訪日した外国要人との面会など多忙な日程のなか、石破茂首相も駆けつけて祝辞を述べた。
 歴史を顧みれば、神政連が結成されたのは昭和四十四年十一月八日。それは「内に外にまことに憂念禁じ難きものあり」との創立時の宣言にあるごとく、当時の神社界の先人たちの憂国の情念が結集してできたものである。この年五月には岸信介元首相を会長に自主憲法制定国民会議が結成され、六月には自由民主党が最初の靖國神社国家護持法案を国会に提出してゐる。神政連の理念に賛同した神政連議員懇が発足したのは翌年の五月十一日。半年後の十一月二十五日には、憲法九条の改正を熱望した三島由紀夫が自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自決に及んでゐる。
 困難な課題に直面する今日、先人たちの憂念に思ひを致し、民族の道統を守ってその姿勢を匡す国民運動への気運を高めていかなければならない。


 神政連の令和七年中央委員会は、記念式典の翌日に神社本庁で開催された。大東亜戦争終結八十年の節目を迎へる今年、とくに活動方針には天皇陛下の大御心を拝し、祖国のために勇敢に戦ひ、尊い命を捧げて戦後の平和と繁栄の礎となられた先人たちに改めて感謝の誠を捧げるべく、靖國神社や護国神社への参拝勧奨を積極的に推進し、英霊顕彰に努めることが盛り込まれた。
 また今年は昭和百年、来年は昭和元年から起算して満百年にあたってをり、各方面で昭和の御代の歴史回顧がおこなはれるであらう。来年、政府は記念行事を予定してをり、すでにその取組みを始めてゐる。さらに七月には参議院議員通常選挙がおこなはれる。神政連の諸政策の遂行実現には、一人でも多くの志を同じくする議員を国政の場に送り出す必要がある。とりわけ全国区の比例代表で五期目を目指す有村治子議員は神政連にとって欠かすことのできない人物であり、引き続き全力で応援していきたい。


 神政連がこれまで取り組んできた課題は多岐に亙ってゐる。日本国憲法の改正とともに皇室の尊厳護持運動は、事業推進の最重要課題とされてきた。とりわけ平成十七年、当時の小泉純一郎首相の私的諮問機関として設置された「皇室典範に関する有識者会議」が女性天皇・女系天皇を容認する報告書を提出して以降は、万世一系の皇室の伝統護持の大切さを訴へて熱心に国民啓発の努力を重ねてきた。民主党政権の野田佳彦首相の時、いはゆる「女性宮家」創設の議論が新たに起きてきたが、将来の女系継承に繋がる危険性を指摘して強力に反対。その後、御代替りを経た令和四年一月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議により政府の報告書が纏められ、国会に提出された。
 この報告書では「皇族数確保の具体的方策」として、①女性皇族が婚姻後も皇族身分を保持する案、②皇族には認められてゐない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする案、③皇統に属する男系男子を法律により直接皇族とする案――の三案を提示。国会では衆参両院議長のもとで各党からの意見聴取がおこなはれ、「立法府の総意」の取り纏めを目指してきた。しかし立憲民主党の野田代表が、女性皇族の夫となる一般男性とその子にも皇族身分を与へるべきと主張するなどして膠着状態が継続。一般男性が皇室に入ることは皇統を乱す契機ともなりかねず、報告書においても「配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず……」との考へが示されてゐる。皇室の永続のため、歴史伝統に則った野田代表の賢明な判断を求めたい。


 米国でドナルド・トランプ大統領が再登板して以来、世界は予測困難な混乱状態に陥ってゐる。国家間の戦争を誰も収束し得ず、どこの国も分裂・対立が顕著になって自国第一主義に向かひ、自ら国を守り抜くことがたいへん難しい時代となった。このままでは戦後八十年間に亙り謳歌してきたわが国の平和も、脆くも崩れ去ることが憂慮される。それだけに神政連と議員懇、そして斯界も、一致団結して諸課題に対処していくことが強く望まれる。
令和七年六月二十三日

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