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【新刊紹介】井上毅 ―大僚を動かして、自己の意見を貫けり― 大石 眞著

令和7年05月26日付 8面


我々に示唆を与へる 忍苦不抜に生きた姿

 「大日本帝国憲法」や「教育勅語」といった明治政府の重要政策立案で、中心的な役割を果たした人物として知られる井上毅。その生涯を、書翰や政府要路者への献言書などを駆使して明らかにした作品である。
 法制官僚として生きた井上毅に関する研究成果は、これまでも数多く積み重ねられ、汗牛充棟の感がある。本書は、それらの先行研究を踏まへ、井上の思想形成や生き方といった内面に光をあてながら、その五十三年の生涯を追ふ形となってゐる。

 「気概」といふ言葉が単なる精神論として片づけられ、「気節」や「礼節」がいまや縁遠い古語かと首を傾げられてしまふ当節である。残された写真の陰鬱な面影から蒲柳な優男を思はせる井上毅が、幕末から明治といふ激動期を、忍苦不抜の剛毅な硬骨漢として生き抜いた姿は、軽薄な時代を漂ふ我々に示唆する何ものかがあらう。ここに広く江湖に推奨する次第である。
〈税込3520円、ミネルヴァ書房刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(山口・赤間神宮権禰宜 中村聡)
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