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【新刊紹介】阿蘇神社の夜明け前 ――神々とともに生きる社会のエスノグラフィー 柏木亨介著

令和7年05月19日付 6面

阿蘇神社の歴史と 支へる者の民俗誌

 本書は、阿蘇神社の神職や氏子崇敬者が各々の見方・考へ方を方向づける「倫理的規範」をいかに形成し、神社の運営や祭祀を変貌させながら伝承してきたかを長期に調査した民俗誌である。

 印象深いのは、阿蘇惟友氏が「祭神に即した伝統と歴史のうえに立った神社経営の近代化がはかられるのなら、その風潮もいちがいに否定はできないと思う」と述べる一方で、阿蘇神社表参道の馬車止めを外せば観光客増加が期待できるといふ世俗寄りの意見に、神域の静かな佇まひが失はれてしまふと反対したことである。本書は神道人としての矜持を保つことが重要であることを、我々に語りかけてゐるやうにも思へる。
〈税込5280円、藤原書店刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(東京・神田神社禰宜、國學院大學兼任講師 岸川雅範)
関連書籍
[36650003] 阿蘇神社の夜明け前――神々とともに生きる社会のエスノグラフィー
円(本体価格 5,280円+税)
柏木亨介 著 / 藤原書店
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