【新刊紹介】科学史家の宗教論ノート 村上陽一郎著
令和7年05月12日付
5面
科学史の大家による 教養としての宗教論 著者は昭和十一年生まれ、東京大学名誉教授・国際基督教大学名誉教授・東洋英和女学院大学元学長で、西洋思想史を主な切り口に科学史・科学哲学分野を日本において切り開き、これを足場に自身の思想をも論じてきた現代日本を代表する知識人のひとりである。
半世紀以上に亙るその学術的業績については、すでに『村上陽一郎の科学論 批判と応答』(新曜社、平成二十八年)として、十三人の後進研究者によって解説とともに真正面からの厳しい批判がなされ、応答も示された。著者は以後も種々の著作を精力的に発表し続けてをり、本書はその最新刊である。
儀礼を通じた人心の安寧が前景化し、近代科学との緊張関係を強く自覚せずとも伝統文化として信仰実践が可能な神社神道人にとっても、本書の平易な言葉による碩学の問ひかけは、参照する意義を持つと考へる。
〈税込1100円、中央公論新社刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學教授・菅浩二)
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