【新刊紹介】神楽 神々をもてなす伎芸 神崎宣武著
令和8年01月26日付
6面
研究の現状や理解のあり方 事例などを平易な語り口で 昨年(令和七年)十一月に、文化庁の文化審議会無形文化遺産部会において「神楽」がユネスコ無形文化遺産への提案案件に決定された。国指定の重要無形民俗文化財四十件がその対象である。神社界でも馴染みが深く、その実演、維持継承に尽力してゐる「神楽」が、日本を代表する文化、「民俗芸能」として世界に発信される意義は大きく、注目度も今後高まるであらう。
民俗学の碩学・神崎宣武氏による本書は時宜にかなった出版である。「神々をもてなす伎芸」との副題に、著者が追究してこられた神楽の祖型の意味が凝縮されてゐる。日本各地にどれほどの神楽があるのか正確な数字は定かではないが、現在は神楽を宮中の御神楽と民間に伝はる里神楽とに分けて把握されてゐる。本書では後者に焦点があてられ、神楽研究の現状とその理解のあり方、そして各種の神楽がその検証事例として平易な語り口で紹介されてゐる。
著者は指摘する。現在も多数の神楽を存続させてゐる「日本人は、神楽好きの民族」であるが、「多くの神楽の祖型がみえにくくなってもいる」(あとがき)。その理由は「神に向けての神楽」が「人に向けての神楽が派手派手しく」(同)なる状況と平行してゐると。このことは文化財として神楽の本旨をいかに位置づけるか、また地域資源等としての活用が図られる上でも見逃してはならない認識である。その意味でも、多くの関係者に読んでいただきたい一書である。
〈税込2200円、KADOKAWA刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(皇學館大学名誉教授・櫻井治男)
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