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国際茅葺き会議白川郷で開催に 日本茅葺き文化協会

令和元年06月10日付 6面

 「国際茅葺き会議日本大会」が五月十八・十九の両日、岐阜県大野郡白川村で開催され、世界七カ国の茅葺き職人などが茅葺きの技術や文化について意見を交はした。
 この大会は日本、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、南アフリカでつくる国際茅葺き協会(ITS)が各国持ち回りで二年に一度おこなってゐるもので、六回目となる今回は初の日本開催となった。一般社団法人日本茅葺き文化協会(安藤邦廣代表理事)と白川村が共催してをり、文化庁・岐阜県が助成、国土交通省や環境省・林野庁などが後援する。

茅葺きフォーラム

 十八日は約四百三十人の参加者が集ふなか、午後十二時四十五分から白川郷学園体育館で国際茅葺きフォーラム「世界の茅葺き、これからの茅葺き」がおこなはれた。
 白川郷学園後期課程生徒一同によるウェルカムソングの合唱があったのち、安藤代表理事が挨拶。「世界中の茅葺き職人・茅葺き関係者が本大会で互ひの文化を尊重し合ひ、未来に茅葺きの世界を伝承できるやう祈念する」旨を述べた。
 また急遽、務台俊介衆議院議員が駆け付けて挨拶に立ち、今年おこなはれる大嘗祭では主要三殿の屋根を茅葺きから板葺きに変更する方針が示されてゐることを説明。茅葺きへの変更を宮内庁に訴へたことも述懐しつつ、伝統文化を継承するため茅葺き文化を伝承する議員連盟の設立を目指し、さまざまな課題を政治的に支援していきたいと意慾をみせた。
 世界の茅葺き事情については各国の代表が自国の現状や茅葺きにかける思ひなどを報告。「わが国では茅葺きがとても好かれてゐる」(オランダ)、「日本の式年遷宮といふのは素晴らしい。技術が失はれることなく繋がっていく」(スウェーデン)、「茅葺きがただの博物館と化してしまったらといふ懸念がある」(デンマーク)などさまざまな発表があった。
 日本の茅葺き事情については安藤代表理事が「地域性豊かなかたちと技」と題して発表。茅の目的が屋根を葺くだけでなく肥料や飼料など余すことなく使はれ循環してゐる日本特有の文化に触れつつ、茅葺き屋根の減少率が厳しくなってゐる自国の現況に危機感を示した。また国内のさまざまな茅葺き屋根を画像で示しつつ、風土によって違ふ屋根の特徴なども解説した。
 こののち、同学園後期課程の生徒五人が「世界遺産の茅葺きのこれまでとこれから」と題して、白川郷で受け継がれてきた村人同士で助け合って屋根を葺く「結」や村の魅力などを英語で発表。また若手の茅葺き職人による茅葺きの未来についての発表もあった。
 終盤では各国の代表が登壇して意見交換を実施。「環境にやさしい茅葺き」「結の精神」「茅を循環させること」「茅葺きを残すだけでなく建てていくこと」などについて熱心に語り合った。また各国から茅葺きの継承に向けて日本へのエールも。互ひの文化について理解を深めるひとときとなった。
 夕方からはトヨタ白川郷自然学校で歓迎レセプションが開催され、職人同士が懇親を深めた。また同村・八幡神社の平瀬獅子舞保存会による獅子舞の披露も。日本の伝統芸能に多くの人が釘付けとなった。

体験や総会も開催

 翌十九日は「結の屋根葺きワークショップ」がおこなはれた。世界の茅葺き職人と白川村民あはせて約百八十人が合掌造りの屋根を葺き「結」を体験。「こんな貴重な体験ができてとても嬉しい」「技を盗ませてもらった」などの声が聞かれた。
 荻町公民館では午前九時三十分から日本茅葺き文化協会の第十回通常総会も開催され、平成三十年度の事業・決算報告や、平成三十一年の事業計画・収支予算書の承認について審議。また昨年、文化庁の選定保存技術「茅採取」の保存団体として同協会が認定されたことや、昨年度に引き続き文化審議会で「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産への提案候補となってゐることなどを報告した。
 国際茅葺き会議は、こののち二十・二十一の両日は京都府、二十二日は兵庫県に会場を移し、茅葺き建物の見学等をおこなった。

(写真)
各国の参加者で「結」の体験
国際茅葺きフォーラム
レセプションでの獅子舞