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論説 新年度を迎へ 課題や問題意識の共有を

令和7年07月07日付 2面

 六月晦日の夏越大祓を終へて七月を迎へた。
 今号発行日の七月七日は二十四節気の一つ小暑にあたってをり、暦の上ではいよいよ暑さ厳しい季節に向かふ。ただ今年は「梅雨前線が一時消滅」などと報じられたやうに天気図上で梅雨前線が確認できなくなる事態が発生し、梅雨明け前から気温が三十五度以上となる猛暑日を記録した地域も。その後、西日本の各地では過去最速の早さで梅雨明けとなるなど、すでに夏本番の厳しい暑さに見舞はれてゐる。
 さうしたなかで令和七年の上半期が過ぎて下半期に入ったが、斯界においては神社本庁が七月一日からの一年間を会計年度とするため、これから令和七年度が始まる。国際環境や国内政治をはじめ内外の情勢に先行き不透明な部分も多いなか、令和七年の下半期そして神社本庁の新年度を迎へるにあたり、まづは当面する課題や問題意識を共有しておきたい。


 神社本庁においては五月定例評議員会における役員改選などを経て、新たな執行部のもとで新年度を迎へた。統理をはじめ正副総長は留任となった一方で、常務理事以下の理事・監事には新任者も含まれ、新たな顔ぶれを加へての出発となる。新年度の施策に関しては、本紙でも紹介されてゐたやうに先日の神社庁事務担当者会において、それぞれ担当部署から詳細な説明があった。
 このうち令和七年度の神宮大麻頒布向上施策については、神宮と国民との絆である神宮大麻の奉斎を中心とした家庭祭祀の振興を図るべく、本庁、神社庁・支部それぞれにおける活動内容を列挙した実施要綱を提示。第六十三回神宮式年遷宮の準備状況などを踏まへて内容の見直しができるやう今年度も実施期間を一年間とし、引き続き「氏子区域の実態把握」と「頒布奉仕者の意識向上」を主眼としてゐる。またとくに式年遷宮に係る広報をおこなふ際には、神宮の真姿顕現や神宮大麻奉斎の意義についての啓発も検討することなどが盛り込まれた。
 これから順次始まっていくこととなる式年遷宮の広報活動や啓発活動、そして奉賛活動との関はりのなかで、神宮大麻の奉斎についてもさらなる理解を得られるやう努めていきたいものである。


 また今年は、大東亜戦争終結八十年の節目にあたってゐる。すでに沖縄戦における組織的戦闘が終結した六月二十三日の沖縄「慰霊の日」を過ぎ、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」である八月十五日が近づく。神社本庁では靖國神社・護国神社への参拝を勧奨するとともに啓発冊子を作成して活用を促すなど、斯界を挙げて英霊に慰霊・顕彰の誠を捧げるべく取組みを進めてゐる。
 さらに昨今の時局に目を向ければ、安定的な皇位継承に関する与野党協議の行方や憲法改正の実現など懸案事項は山積してをり、さうしたなかで七月二十日には、「事実上の政権選択選挙」などともいはれる第二十七回参議院議員通常選挙がおこなはれる。加へて稲作と祭祀との歴史的・信仰的な関係性に鑑みれば、昨年来の米価高騰の影響や今後の政府対応、中・長期的な農政のあり方などにも関心を持ち続けたい。いづれも関係団体・友好団体などとの連携・協力のもと、適宜要路への働きかけなども必要とならう。
 そのほか神社本庁に求められる活動は多岐に亙る。前述の通り新執行部が発足し、今号掲載のやうに本庁事務局においても人事異動の発令を経て迎へた新年度。今後のさらなる施策推進に大いに期待するものである。


 なにより神社本庁の令和七年度においては、来年二月三日に本庁設立八十周年の節目を迎へ、さらに五月にはその記念式典が挙行される予定だ。大東亜戦争終結後の米軍による占領行政のなかで、いはゆる「神道指令」が発出され、神社関係法令が廃止されたことにともなって神社本庁は設立を余儀なくされた。
 大東亜戦争終結八十年の節目にあたる八月十五日を目前に、さらに戦争終結を端緒とする本庁設立の八十周年を来年二月に控へ、先の大戦で散華された英霊はもとより、戦後の斯道興隆に挺身尽力した先人たちに思ひを馳せ、わが国そして斯界のあり方を考へながら令和七年の新年度に臨みたい。
令和七年七月七日

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