【新刊紹介】変わりゆく戦没者慰霊 ―モニュメントから聖地巡礼まで― 由谷裕哉編著
令和7年11月03日付
6面
宗教民俗学の立場で 歴史的経緯や変化を 本書は編著者の由谷裕哉氏が宗教民俗学の立場から近年精力的に研究を進めてゐる戦歿者慰霊の問題に関する書だ。執筆者は由谷氏のほか、時枝務・佐藤喜久一郎・及川高・川出康博の四氏である。
由谷氏曰く、慰霊の本質や形而上学的な意味を問ふやうな先行研究、いはゆる靖國問題をめぐる左右のイデオロギー的闘争のやうな先学の論考から一旦距離をおいた論集だといふ。
紙幅の関係で各論考を詳細に記すことはできないが、由谷氏の編著書である『郷土の記憶・モニュメント』『サブカルチャー聖地巡礼』『神社合祀 再考』(いづれも岩田書院)もぜひ御覧いただければと思ふ。これらを併せて紐解くことで、終戦八十年といふ節目にあたって編著者らの説く現代社会における戦歿者慰霊にかかる宗教的民俗や、地域社会の慣行の変化について、神社や慰霊碑を回路として窺ひ知ることができよう。
〈税込2970円、雄山閣刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學神道文化学部教授・藤本頼生)
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